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グランドセイコー SLGW003 エボリューション9 コレクション 新作

日本のブランドとして唯一、Watches & Wondersへ参加するグランドセイコー。会場では今年も実にさまざまな新作が発表された(Watches & Wonders 2024のグランドセイコーブースから発表された新作を紹介した動画もあるのでチェックしてみて欲しい)が、そのなかでも多くの業界関係者から注目を集めていたのが、グランドセイコー SLGW003、エボリューション9 コレクション 手巻メカニカルハイビート36000 80 Hours モデルだ。

ウブロスーパーコピー代引き 優良サイト優れた性能だけが魅力ではない。雫石の自然から発想を得たムーブメント
その名が示すように、本作が搭載するのは3万6000振動/時(10振動)の手巻きムーブメント。約50年ぶりになるという10振動の手巻きCal.9SA4だ。これは2020年に登場した自動巻きのCal.9SA5をベースに開発されたムーブメントで、動力ぜんまいからの動力を効率よく調速機構に伝えるデュアルインパルス脱進機、安定した精度を長期にわたって持続するのに適したグランドセイコーフリースプラング、テンプの振り角が変化しても精度に変化が起きにくい巻き上げひげ、そしてふたつの動力ぜんまいを備えたツインバレルなど、Cal.9SA5の持つ特徴を踏襲。グランドセイコー独自の規格に基づく安定した高い精度とロングパワーリザーブをCal.9SA4においても実現している。

Cal.9SA4とは、単にCal.9SA5を手巻き化したものなのかというと、実はそんなことはない。Cal.9SA4では究極の巻き心地を目指し、巻き上げ時の心地よい感触と音を実現するため、こはぜとこはぜばねの構造が再設計された。加えて巻き上げの負担を減らすために手巻きの輪列も見直され、ベースとなったCal.9SA5に比べて巻き上げ回数を約15%削減した状態にもかかわらず、同等の巻き上げ効果が得られるようになっているという。さらに裏蓋側にCal.9SA5にはなかったパワーリザーブインジケーターを追加したことで、持続時間の残量目安も分かるようになった。

岩手県雫石町にあるグランドセイコースタジオ 雫石。

グランドセイコーの機械式モデルが作られるのは、岩手県の雫石町にあるグランドセイコースタジオ 雫石だ。ブランドではこれまでにも、豊かな自然から得たインスピレーションをそのウォッチメイキングに生かしてきた。もちろん本作においても、そうした表現がディテールに盛り込まれている。たとえば、ムーブメントの受けに施された繊細なストライプ模様は、スタジオ近くを流れる雫石川の流れを表現したものだそうだ。そして、これまでのグランドセイコーには見られなかったような遊び心あふれるディテールを持つ点こそが、Cal.9SA4における最大の見どころとなっている。その詳細については動画のなかで詳しく解説をしているので、ぜひともチェックしてみて欲しい。

エボリューション9の新機軸となるSLGW003のスタイル

ダイヤルのデザインモチーフである白樺林。

SLGW003は、グランドセイコーのなかでも人気の高い“白樺”ダイヤルシリーズに加わる新しいバリエーションだ。既存の白樺ダイヤルには、自動巻きのCal.9SA5を搭載したSLGH005とスプリングドライブムーブメントのCal.9RA2を搭載したSLGA009がある。

どちらも白樺林を表現したものではあるが、SLGH005は岩手県雫石町の「グランドセイコースタジオ 雫石」、一方のSLGA009はスプリングドライブモデルが作られる長野県塩尻市にある「信州 時の匠工房」の近くに群生する白樺林と、それぞれインスピレーションの源泉は異なる。さらに前者はその力強さをダイナミックな陰影で、後者は静けさを繊細な陰影で表現しており、白樺ダイヤルとひと口に言っても、実は似て非なるダイヤルとなっている。

では、新作となるSLGW003の白樺ダイヤルはどうか。既存モデル(SLGH005とSLGA009)のダイヤルが高く伸びた白樺が奥行きを持って幾重にも林立する光景を縦に走る型打模様で表現したのに対して、SLGW003では凹凸が不規則に連なる白樺の樹皮の美しさを横に走る精緻な型打模様で表現された。同じ白樺モチーフでありながら、こちらも既存モデルのいずれともその表現は異なり、与える印象もずいぶん違っている。

印象が異なるふたつの白樺ダイヤル。写真左は既存モデルのSLGH005、右は新作のSLGW003だ。

加えて言えば、その印象の違いはモチーフの違いだけに起因するものではない。既存の白樺ダイヤルモデルとなるSLGH005とSLGA009は、どちらかと言えば日常的につけられるスポーティな時計として表現されているのに対し、新作はエボリューション9(E9) コレクション共通のデザイン文法である「E9スタイル」に則りつつも、日常的につけられる“ドレスウォッチ”として表現されているのだ。そのため、SLGW003ではインデックスやベゼル、ラグの幅をすっきりと細くするなどデザインを改め、手巻きドレスウォッチとして仕立て直されてた。写真で見比べてみると、その違いがよく分かるだろう。

見た目はもちろん、スペックや使われる素材にもその違いは表れている。まずSLGW003は自動巻きローターがない手巻きゆえに薄くなるのは当然ではあるが、ケース厚は9.95mmと10mmを切る(ちなみにSLGH005のケース厚は11.7mm、SLGA009は11.8mmだ)。手巻きドレスウォッチというスタイルにおいてもE9 コレクションならではの快適な装着性を実現するため、手首にしっかりホールドするように重心は低く設計されている。

さらにケース素材には、通常のチタンと同様の軽さを持ちながら、標準的なステンレススティールよりも約2倍も硬く、傷がつきにくい“ブリリアントハードチタン”を採用する。このチタン素材には一般的なチタンに見られる特有のグレーがかった色味はなく、熟練の研磨師がザラツ研磨を駆使して磨き上げることで上質な輝きを持つ。軽くて美しい、まさにドレスウォッチにふさわしい素材だ。

2017年にグランドセイコーのために開発されたブリリアントハードチタンは、これまで初代グランドセイコー デザイン復刻モデルのSBGW259やKodo コンスタントフォース・トゥールビヨン(SLGT003)などでしか用いられていなかった特別な素材だが、それを本作に採用したということからもブランドの特別な思いが見て取れる。

レザーストラップ仕様のSLGW003ではワンプッシュ3つ折れ方式デプロイメントバックルを採用するが、こちらもケース同様にブリリアントハードチタン製だ。

グランドセイコーらしくも、新たな魅力を示した意欲作

グランドセイコーでは、デザインを規定する独自のデザイン文法であるE9スタイルに則り、審美性、視認性、装着性という3つを軸として時計がデザインされる。要するに美しく、見やすく、つけ心地に優れた時計であることがグランドセイコーであることの必須条件なのだ。SLGW003のスタイルは既存モデルとは異なる部分もあるものの、このE9スタイルに照らし合わせて見れば、間違いなくグランドセイコー“らしい”時計である。

その一方で、一般的なドレスウォッチのデザインコードからすると、SLGW003のそれはずいぶんセオリーとはかけ離れたものと言える。前述のブリリアントハードチタンをはじめ、秒針と分目盛りを持つところや、それこそ白樺ダイヤルのような主張の強い装飾は、数多あるドレスウォッチとは一線を画す要素だろう。そのため、ドレスウォッチという表現にいささか違和感を覚える人は少なくないかもしれない。だが、今回SLGW003の実機レビューを通して感じられたのは“こんなドレスウォッチがあってもいいだろう?”、“これがグランドセイコー流のドレスウォッチなんだ”という、グランドセイコーの作り手たちの思いだ。

グランドセイコーに対して、実用性重視の真面目な時計というイメージを抱く人は多いことだろう。しかしこのSLGW003には、グランドセイコーはそれだけが特徴の時計ではなく、人の感性に訴えかけ心を引き込む、そうしたところもグランドセイコーが持つ側面なのだということを広く示そうという強い意志を感じることができた。ぜひとも動画と合わせて、SLGW003が持つ魅力を読者のみなさんにも感じ取ってもらえたら幸いだ。

ティファニーが秘めるウォッチメイキングの可能性

アメリカ唯一の伝統的なラグジュアリーブランドであるティファニーはハイジュエリーウォッチに力を注いでいるが、さらに幅を広げる余地があるのではないだろうか?

アメリカの高級小売店のなかで、真に存在感を誇るものは少ない。バーグドルフ・グッドマン(Bergdorf Goodman)やサックスフィフスアベニュー(Saks Fifth Avenue)がニューヨークのデパート業界で支配的な位置を占めるなか(バーニーズは惜しまれつつも閉店した)、ティファニーはアメリカの高級ショッピング体験の最前線に立ち続けている。2021年にLVMHに買収されたことで、ティファニーの青い箱と白いリボンのブランドは再びある程度の存在感を取り戻した。

パテックフィリップスーパーコピー販売おすすめ優良サイトスーパーボウルを含む数々のスポーツイベントの勝者にトロフィーを授けてきた歴史を持つオールアメリカンブランドが、2020年代のポップカルチャーに新たな足場を築いたのはどうしてだろうか? もちろん、ビヨンセ(Beyonce)とジェイ・Z(Jay-Z)を広告カップルに起用したからである。それに加えて、レッドカーペットを彩る大スターたちのドレスアップ、NFT、手ごろな価格で新たな顧客を引き込む人気のユニセックスの“ロック”ブレスレットコレクション、そしてパテック フィリップやシュプリーム、ナイキ、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)との話題性のあるコラボレーションを行い、LVMHが何世紀も続くブランドに若々しいエネルギーを注入しようとする大規模な取り組みも見てとれる。

ティファニーにはあらゆる市場セグメントでジュエリーを販売するブランド力がある。伝統、再び得た現代的な価値、そして大量の洗練されたマーケティングは、販売のための人口層が広いことを意味する。ではウォッチメイキングにおいてはどうだろうか? ティファニーは現在女性向けのハイジュエリータイムピースに注力している。4月にはプラチナ製のクォーツバード オン ア ロックウォッチと、バード オン ア フライング トゥールビヨンを、今年のセレステ ブルーブック コレクションの一部として発表した。これらのデザインは、1965年にジャン・シュランバージェ(Jean Schlumberger)が制作したバード オン ア ロックブローチに着想を得ている。ティファニーの伝統であるが、シュランバージェのデザインはティファニーのハイジュエリーウォッチとしてはある程度予想されるモチーフである。美しいが、予想の範囲内であると言えるのだ。

Tiffany Bird On a Rock Watch
 だがこのフライング トゥールビヨンは、ティファニーがハイウォッチメイキングの進化において明確な1歩を踏み出したことを示している。文字盤上で“飛翔”するダイヤモンドがあしらわれた2羽の鳥は、ジェムストーンの象嵌、ゴールドの彫刻、そしてスノーセッティングを駆使してつくられており、これらはすべてラ・ファブリク・デュ・タンで行われた。特注ムーブメントであるCal.AFT24T01は、ティファニーのクリエイティブディレクションのもと、スイスの革新的な高級時計マニュファクチュール、アルティム(Artime)によって開発された。このハイウォッチメイキングへの非常に有効な挑戦は、ティファニーにとってさらに大きな展開を予感させるものなのだろうか? 時計のデザインには、古風で夢のある要素がふんだんに盛り込まれている。これは高級ジュエリーウォッチデザインでは定番ともいえる手法だ。ヴァン クリーフならバレリーナ、エルメスなら馬、そしてティファニーならシュランバージェの鳥が象徴的なモチーフとなっている。ハイジュエリーに隣接するウォッチメイキングに依存し、比較的高年齢層で景気に左右されにくい顧客に向けるのは理にかなっている。どのようなブランドであれ、女性向けにトップレベルの技術や複雑機構に焦点を当てるのには大いに期待したいところだが、明確に性別を意識しない、かつ価格帯の低い時計が登場するのはいつになるのだろうかと考えさせられる。

Tiffany Flying Birds On a Rock
 競合他社であるブルガリやエルメスがウォッチメイキング分野で果敢に挑戦を続けている一方で、ティファニーは比較的静かな状況にある。“ティファニーは理論上、時計市場で大きな成長の可能性を持っているが、今のところその機会はまだ活かされていない”と、バーンスタイン・リサーチ(Bernstein Research)のラグジュアリー部門マネージング・ディレクターであるルカ・ソルカ(Luca Solca)氏は説明する。“このカテゴリーを開拓する鍵は、ラインナップを整理し、ひとつか多くてもふたつの差別化された製品に集中することだ。これはブルガリがオクトとセルペンティで、シャネルがJ12で成功させた手法と同じだ”。ソルカ氏は、新たな経営陣がこのカテゴリーにいずれ取り組むだろうと期待しており、“やるべきことリスト”をこなすにつれて対応されるだろうと述べている。

 確かにティファニーは最近、注目すべき取り組みを行っている。昨年の夏にはバード オン ア ロックモデルとともに、ハードウェアコレクションをベースにしたゴールド&スティールの時計を発表した。同シリーズはクッションカットのティファニーダイヤモンドをほうふつとさせるケースシェイプと、ファセットの入ったサファイアクリスタルが特徴だ。これはソルカ氏が指摘した、ティファニーらしい差別化された製品として十分に強いデザインかどうかは不明だが、この取り組みこそ同社の時計セグメント拡大の瀬戸際にあることを示している。

Tiffany Hardware watch
ティファニー ハードウェア ウォッチ

 ではこのように競争が激しい市場のなか、アメリカの伝統ブランドであるティファニーはどのように自らを位置づけているのだろうか? ティファニーには、ウォッチメイキングの大規模な取り組みを支える歴史的な実績がある。彼らはアメリカ市場でパテック フィリップ初の公式小売パートナーとなり(正式な関係は1854年に始まった)、その後170年以上にわたってパートナーシップを続けている。さらに、1874年にはジュネーブにかなり大規模な自社工場を設立し、1878年にその施設をパテックに売却した。この譲渡には理由がある。この施設を引き渡すことでティファニーウォッチに最上級のムーブメントを供給できるようにし、アメリカ市場でティファニーが独占販売するパテック フィリップウォッチの品質を確保するためであった。

 1930年代の大恐慌から1980年代にかけて、ティファニーは自社の時計製造を一時停止していたが、そのあいだもロレックスやパテック フィリップ、IWC、モバードなどの時計を取り扱う小売業者としての足場を固め続けた。そして2024年、ティファニーサイン入りのダイヤルは今やきわめて貴重な存在となっている。これにより、理論上は時計ブランドのダブルサインなしでもティファニーブランドのダイヤルをコレクター層に売り込むことが容易になる可能性がある。ティファニーという名前は、時計業界で歴史的な重みを持ち、ダイヤル上で違和感がなく目の肥えた人にも受け入れられる存在である。

Tiffany classics
Tiffany Classics
 1980年代に、ティファニーは再び“インハウス”での大規模な時計製造に回帰した。これは理にかなっている。クォーツショックの不確実な時期には製造を一時停止し、市場が回復したときに再開して需要が高まった際に大量生産を行うという流れだ。アメリカの最も権威ある高級小売業者であるティファニーは、“ファッションウォッチ”という教科書的な定義を避けてきたが、1980年代のクォーツブームに便乗したのも事実である。時代が進むにつれ、ティファニーのモダンウォッチへの進出も進化した。この時期は繁栄の時代であり、スイス製の高級輸入モデルを販売する一方で、“クラシック”コレクションの時計も大成功を収めていた。1980年、オノ・ヨーコが宝石で飾られたアメリカ国旗のピンやパテックのRef.2499を手にした一方で、一般の顧客は“ティファニー”とだけ刻印されたエレガントな金無垢の“クラシック”コレクションウォッチを買い求めた。

Breuer Classique watch
ブレゲ Ref.4485 ゴールドリストウォッチ ティファニーネーム

 1980年、ティファニーが完全に独自でデザインした最初の新世代ウォッチはクォーツムーブメントを搭載しており、外観的にも(そして精神的にも)ブレゲのドレスウォッチの美学に通じていた。ティファニーは1981年、より大衆市場に進出しようとしていたブレゲウォッチの販売を開始。ティファニーは、アメリカでブレゲの時計やクロックを取り扱った初の、そして唯一の企業であり、自社の名前をブレゲ製品に刻印することを許された唯一の小売業者でもあった。

Tiffany Breguet Classique
ブレゲ クラシック “ティファニー”。Image: courtesy of Analog:Shift

 アトラスウォッチは1983年に登場した。そのデザインは、初期のタウンホールや教会の時計塔にインスパイアされ、フラットにカットアウトされた金メッキ数字が、マットな石の背景と対比するデザインとなっていた。1982年に発表されたラウンドケースウォッチはフラットな背景にクリーンなラインで構成された時間表示で、ポリッシュ仕上げされたローマ数字インデックスが、浮き彫りのように立体的で際立っていた。1853年からティファニーのニューヨーク本店の正面に飾られている時計にちなんで名づけられたアトラスコレクションは、1990年代にはジュエリー、ペン、アクセサリーへと拡大した。アトラスウォッチ(およびジュエリー)は今でもカタログに掲載されているが、オリジナルの滑らかなコイン型のラウンドシェイプを控えめにしたデザインに変わっている。もしかすると、復刻版のタイミングが来ているのかもしれない。ブルガリ・ブルガリが今年初め、オリジナルに近い仕様で再発売されたことを思い出していただければ理解しやすいだろうか。

Tiffany Atlas watch
1983年10月のタウン・アンド・カントリー誌に掲載されたアトラスの広告。

 モノグラム入りの時計(以下の写真)は、1980年代のプレッピーな美学を完璧に象徴している。当時のアメリカのエリート層向け高級ファッションは、カジュアルでWASP(白人アングロサクソン系プロテスタント)的なフォーマルさを備えており、ブルックスブラザーズのボタンダウンシャツやポロシャツ、チノパン、ローファーといったスタイルがその典型だった。そしてそこにはパワードレッシング(職場での権威や自信を示すために1980年代に広まった、フォーマルで洗練されたビジネスファッション)もあった。1980年代のニューヨーク(および類似の大都市圏)におけるこの層を、平日はウォール街、週末はカントリークラブへと続く一貫したファッションスタイルを持つサルトリアと呼べるだろう。

Tiffany monogram watches
 アメリカンファッションは1980年代についに世界的な地位を確立した。この新たな地位は、アメリカ国内で生まれたファッションを世界的に通用させるために、10年間にわたって懸命に努力してきた結果である。ホルストン(Halston)、ジェフリー・ビーン(Geoffrey Beene)、ビル・ブラス(Bill Blass)、そして彼らのセブンスアベニューの仲間たちは、1970年代にアメリカのファッションを新たな高みに押し上げた。ナンシー・レーガン(Nancy Reagan)からグロリア・ヴァンダービルト(Gloria Vanderbilt)、ブルック・シールズ(Brooke Shields)に至るまで、元ワシントン・ポスト紙のファッション評論家ロビン・ジヴハン(Robin Givhan)がかつて“アメリカンスタイルは、社交界の淑女やおてんばな美人によって具現化された”と表現したように、このスタイルが具現化されていた。

 1970年代のボヘミアンな雰囲気から1980年代のグラマーなスタイルへの移行により、カルバン・クライン(Calvin Klein)、ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)、ダナ・キャラン(Donna Karan)といったデザイナーたちは国際的なロックスターとなり、広く知られる存在となった。ティファニーは、まさにアメリカンファッションドリームと同義の代名詞となったのだ。

Tiffany Elsa Peretti watch
エルサ・ペレッティのダイヤモンドコレクション。

 ここでエルサ・ペレッティ(Elsa Peretti)の登場だ。彼女はスタジオ54のホルストン派の重要なメンバーであり、そのあとティファニーで最も成功し、認知されるデザイナーとなった。ペレッティがデザインしたのは、オープンハートペンダントやボーンカフだ。彼女は常に、女性が身につけるものとの共生関係を追求しており、クッションカットのティファニーダイヤモンドにインスパイアされたダイヤモンドコレクションの一環として、ウォッチネックレス(通常の時計も含む)を製作した。遊び心のあるクォーツで、スターリングシルバー製のこの時計はペレッティらしい素材のシンプルさが特徴であった。

 パロマ・ピカソ(Paloma Picasso)もまたティファニーのデザイナーとして採用された。彼女は大胆なスケール、強い色彩、そして半貴石という魅力を生かし、“本物の”ジュエリーをモダンなものにした。ピカソは、彼女のグラフィカルなデザインのジュエリーに合わせた時計をいくつかティファニー向けにデザインしている。

Tiffany Paloma Picasso watches
パロマ・ピカソがデザインしたティファニー。

 テソロは1987年に発表され、18Kゴールド、SS、ツートンの完全一体型ウォッチとして登場した。デザインは洗練され、スリムで、きらめくようなポリッシュ仕上げが施されていた。これは80年代後期のスポーティでありながら派手さもあるルックに完全にマッチした。ラグジュアリースポーツウォッチがついに中価格帯に到達し、テソロは間違いなくエベルやタグ・ホイヤー S/el リンクの競争相手であった。

Tiffany Tesoro watches
テソロコレクション。

Tiffany Cordis Collection
ティファニー コーディス コレクション(1996年)は、1940年代のカクテルウォッチをベースにしたもので、18Kホワイトゴールドとイエローゴールドで展開していた。

 21世紀に入ると、ティファニーはこれまでで最高のインハウスウォッチ製造に挑戦した。スイス製のティファニー マークコレクションは、19世紀のティファニー懐中時計にインスピレーションを得たもので、ラウンドとクーペというふたつのシェイプが特徴だった。スタイルはプラチナ、18Kゴールド、SSのモデルがあり、アリゲーターレザーやレザーストラップ、あるいはリンクブレスレットが選べた。クリーンで伝統的なダイヤルには、細長いローマ数字と、丸みを帯びたダイヤモンドポリッシュ仕上げの針が使われていた。ムーブメントは全部で7種類あり、手巻き、自動巻き、月・日・曜日表示とムーンフェイズ付きカレンダー、クロノグラフ、レギュレーター、トゥールビヨン、そしてクォーツが含まれていた。大半のモデルは2サイズで提供され、全部で24のSKUがあった。

Tiffany Mark Collection
マークコレクション。画像はオリジナルカタログから。

 この時点で、ティファニーが本格的に時計製造に取り組んでいる姿が見られるようになる。クーペシェイプ、ジラール・ペルゴのスリーブリッジキャリバートゥールビヨン、そしてレギュレーターの複雑機構などがその例だ。私の見解では、ティファニーのモダンな“インハウス”プロジェクトのなかで最も本格的かつ美的に成功したものだろう。実際に確認したわけではないが、ティファニーのマーク クーペとダニエル・ロートのダブルエリプス型ケースの類似性は注目に値する。ロート時代のブレゲを取り扱っていた唯一のアメリカ小売業者がティファニーであったため、ロートとティファニーの関係がマーク クーペに繋がった可能性もある。だが両者は何の関係もないかもしれない。真相は誰にも分からない。

The Tiffany Mark Tourbillon
ティファニー マーク トゥールビヨン。Image: courtesy of Sotheby's

Tiffany Mark Minute repeater
ティファニー マーク イエローゴールド ミニッツリピーター。Image: courtesy of Sotheby's

 ティファニーには、デザイン性の高い時計を展開するチャンスが十分にある。デザイン性の高い時計は、ほとんどの場合ジュエリーハウスが手がけている。2015年に発表されたCT60のように、1945年にティファニーで販売されたFDR(フランクリン・ルーズベルト)のモバードウォッチに基づいた過去の販売モデルの歴史を引き継ぐこともできるかもしれない。あるいは、ジュエリー分野での専門性に依存するのが最善だろうか? ソルカ氏は、ティファニーのようなブランドにとってハイウォッチメイキングに投資することがブランドの信頼性を高めるために不可欠だと主張している。“それはブランドエクイティ(資産価値)を構築することだ”と彼は述べ、“その結果として、憧れの高級価格帯での販売機会が増え、これが高級ブランドにとっての柱となる。最終的にブランドの品質に対する評価も高まる”と語っている。

 エルメスを見れば明らかだ。エルメスは歴史的にJLCやユニバーサル・ジュネーブを販売していたが、近年はハイウォッチメイキングの成功により、手の届きやすいスポーツウォッチの信頼性も高めている。ブランド認知を得るために、自社の特徴を散りばめた新しい道を築くことは十分に成果を上げる可能性がある。

FDR watch
フランクリン・D・ルーズベルト(Franklin D. Roosevelt)大統領のティファニーサイン入りモバード Ref.44776。

FDR Caseback
(エンゲージメントリングを除いて)1980年代から2000年代にかけてティファニーが広く知られるようになったのは、主に比較的手頃な価格帯のジュエリーによるものであった。エルサ・ペレッティやパロマ・ピカソといった外部デザイナーの影響を受けながら、リターン トゥ ティファニーやティファニー 1837などのコレクションを生み出した。これらはギフトや入門商品、あるいはブランドの勢いと評判を維持するための“慰労品”としてよく機能していた。ティファニーのブランドは基本的に、高級で手の届かないハイジュエリーに対する憧れに基づいていたが、大部分のティファニーの時計も同様のモデルに依存しており、“クラシック”コレクションはティファニーサイン入りのパテックやブレゲを補完する形で展開されていた。

Tiffany Elsa Peretti vintage ad
 結局のところ、ティファニーは自らの立ち位置をよく理解している。“多くの人々は、ティファニーが時計に関して何をしているのか正確には分かっていない。パテックとの共同事業なのか? 自社で時計を製造しているのか? それとも購入しているのか? などね”と、ティファニーオルロジュリー部門の副社長ニコラ・ボー(Nicolas Beau)氏は説明する。“まずは私たちが何をしているのかを人々に理解してもらう必要がある。もちろん、男性用の時計も登場する。ただストーリーをジュエリーから始めるほうがより理にかなっているのだ”。

 では2024年において、最も歴史あるアメリカの高級ブランドであるティファニーは、ヨーロッパの競合他社のなかでどのような立ち位置にいるのだろうか? そしてティファニーはその“アメリカらしさ”をどのように活かして、現代の賢い消費者に訴える独自のアイデンティティを形成できるのだろうか? 今やプレッピーが再びトレンドになっており、Instagramを少しスクロールするだけでヴィンテージラルフ ローレンの広告が懐かしさを呼び起こしてくれる。本格ファッションブランドであるセリーヌやミュウミュウもこの美学を取り入れており、少し手の届きやすいところでは、コンテンポラリーブランドのエメ レオン ドレやスポーティ&リッチが、80年代から90年代のWASP的なルックを(やや皮肉交じりではあるが)中心に据えた美的スタイルを構築している。つい最近、ジェイクルーがプリントカタログを再開するというニュースを読んだところだ。今こそアメリカーナの時代なのだ。デザイン主導の時計に対する強い消費者の需要を加味すれば、ティファニーはウォッチラインナップを強化し、時計部門でのブランドアイデンティティを刷新すれば競合他社に引けを取らない存在になる可能性がある。ペレッティのプレイブック、そして今や世界的に有名なオープンハートペンダントを参考にするのもひとつの手かもしれない。

新作“オートマティック”と独自のマイクロロータームーブメントで復活

55万ドル(日本円で約7860万円)のカリヨン トゥールビヨンのあと、ブランドは新しい自動巻きモデルで、細心の注意を払いながら着実な発展を目指している。

昨年、ジャン-クロード・ビバー(Jean-Claude Biver)氏は息子のピエール・ビバー(Pierre Biver)氏とともに、新ブランド“ビバー”から最初のモデルを発表し、時計業界を驚かせた。なお、ブランドローンチ自体はそれほど驚くものではなかった。JCB(時計の世界ではピエール氏からもそう呼ばれている)は、2022年2月にそのニュースを予告していたからだ。しかし伝統的なエタブリサージュスタイル(部品を外部に依頼し、一元的に組み立てと仕上げを行う手法)で製造されたカリヨン トゥールビヨンの基本価格が55万ドル(日本円で約7860万円)であることには、多くの人が衝撃を受けただろう。

Carillon Tourbillon
ジェムセット仕様の2本のビバー カルティエスーパーコピー代金引換を激安お客様に提供しますカリヨン トゥールビヨン ピースユニーク。それぞれの価格は約130万スイスフラン(日本円で約2億1960万円)である。うち1本はすでに売約済み。

それから半年足らずのうちに、ブランドは同じカリヨン トゥールビヨンをジェムセット仕様や実験的なフォーマットで製造し始めた。予定されている50本のうち36本がすでに販売され、年間で1980万ドル(日本円で約28億3200万円)の収益を上げたというから、圧倒的な成功を収めたように思える。しかし、その舞台裏では多くの出来事が起こっていた。ビバーはOnly Watchチャリティーオークションのために、針のないジェムセットのアートウォッチを制作し、同オークションの混乱の最中この時計を取り下げた。また、ピエール・ビバー氏はCEO(事実上の役割)からクリエイティブ・ディレクターに役職を変更し、代わりにフィリップスを退職したジェームス・マークス(James Marks)氏がCEOに就任した。JCBは引き続き会長を務め、ピエール氏は取締役として残っている。なぜこのような変更を行ったのか? ブランドを今後さらに堅固な基盤に乗せるためである。そしてその未来はビバーの2作目となる時計、“オートマティック”の登場によってすでに現実のものとなった。

それは美しい時計であり、ブランドの第2作目として多くの改良を施し、考え抜かれたものへと仕上げられた。見れば見るほど、細部へのこだわりが伝わってくる。もっと詳しい感想をお伝えするつもりだが、できる限り多くの写真も掲載するため、それを見て自身で判断して欲しい。誰が何を言おうとも、この時計が成功を収めることは間違いない。

これらの時計は、バリエーションによって平均9万9500スイスフラン(日本円で約1680万円)となっている。ローズゴールドにマッチしたダイヤル仕様が7万5000スイスフラン(日本円で約1270万円)から、オブシディアンダイヤルにプラチナケースとプラチナブレスレットを備えたモデルが12万1000スイスフラン(日本円で約2040万円)までと幅がある。サイズは39mm径×10mm厚とカリヨン トゥールビヨンに比べて大幅な改良がされている。最近話題となった独立系ブランドのジェブデ・レジェピ ミニット・イネルテが8万スイスフラン(日本円で約1350万円)であるのに対して、これは異なる顧客層をターゲットにしたまったく異なる提案である。高額な価格設定にもかかわらず、86本のうち4本を除くすべてが、すでにクライアントや小売業者に割り当てられている。しかし、“完売”ではないとピエール・ビバー氏はすぐに指摘し、一部の小売店ではまだ購入が可能だと教えてくれた。それでも、彼らのパートナーやサポーターからの強い信頼の表れであることに間違いはない。

私はカリヨン トゥールビヨンのリリースのみならず実機レビューも取り上げた。その初リリースに対しては、批評と誠実さのバランスを取ってお届けしたためか、ビバー氏は私をアトリエに招待してくれ、新しいムーブメントサプライヤーであるデュボア・デプラ社を訪れて時計やその製作工程を直接見てもらいたいと言った。ピエール・ビバー氏は、もし見学が終わった時点でこの時計が取り上げるに値しないと思ったならそれで構わないし、むしろその点を正直に指摘して欲しいと言ってくれた。だが今回に関して言えば、愛すべき点が多くあると感じた。

アトリエとデュボア・デプラ社
デュボア・デプラ社は、時計業界ではおそらくクロノグラフモジュールで最もよく知られている。ジュウ渓谷に拠点を置くこのメーカーは多くの有名ブランドと協力してきたが、その大半は公にされていない。ロレックス、オメガ、オーデマ ピゲなど、多くのブランドがデュボア・デプラ社に大いに依存している。しかし同社はクロノグラフモジュールだけでなく、統合型のクロノグラフCal.540を含むムーブメントの開発と製造も手がけている。

Dubois Dépraz
デュボア・デプラ社が手がけたムーブメントの一部。

カリヨン トゥールビヨンには、ル・セルクル・デ・オルロジェ社が設計・改良したムーブメントを搭載している。同様のムーブメント(自動巻きではない)をスピーク・マリンも使用しているほか、アーミン・シュトロームもル・セルクル製のリピーターを採用している。今回、デュボア・デプラ社はビバーとの提携により、独自のマイクロロータームーブメントを開発。デュボア・デプラ社のような企業の内部を見学することは、顧客との機密保持契約があるためきわめて珍しい。その内部は、ほかのハイエンドウォッチメイキングと似ている部分もあるが、何よりも注目すべきはデザイナーたちの創造力だ。彼らは大手ブランドに対して問題解決者として貢献してきた実績があり、その技術力に疑いの余地はない。

Dubois Dépraz
デュボア・デプラ社の製造工程の紹介。

Dubois Dépraz
ムーブメントデザイナーの仕事。

Dubois Dépraz
工房でハイエンドな組み立てや製造を行う時計職人たち。

Dubois Dépraz
ムーブメントを加工している様子。

Dubois Dépraz
ふたつのゴールド製プロトタイプムーブメント。

ビバーは上の写真にあるCal.JCB-003の管理権を保持している。他ブランドがこのムーブメントに興味を持った場合、デュボア・デプラ社とともに販売するかどうかを決める必要があるのだ。ケースはエフテオール社が製造しており、同社はランゲ、JLC、ゼニスのケースも手がけている。なお文字盤はLMカドラン社製である。

部品が完成すると、それらはジュウ渓谷とジュネーブの中間に位置するジヴランにあるビバーのアトリエに届けられる。そこではムーブメント仕上げ職人と組み立て職人の小規模なチームが、ブランドの全モデルの製作に取り組んでいる。この訪問時では主に最後のカリヨン トゥールビヨンが仕上げられており、そのあとに最初のオートマティックモデルの製作を開始する予定だった。

ジヴランのアトリエでカリヨン トゥールビヨンを製作している。

ムーブメントのペルラージュ装飾。

カリヨン トゥールビヨンのブリッジに施されたアングラージュ装飾。

ビバーで働く時計職人たちは全員、パテック フィリップやヴァシュロン・コンスタンタン、カルティエといったほかブランドの出身だ。彼らは口々に、ビバーでは多様な業務を担当できるため、これまでの職場では使う機会がなかった技術や仕上げを試したり型にはまらない発想ができるようになったと語っていた。企業が大きくなればなるほど各従業員が専門化していくのは当然だが、ここではクリエイティブを発揮できる環境が整っているのだ。

一例として、ある従業員が発明した特注の音響ボックスが挙げられる。ビバーはカリヨン トゥールビヨンの音色に、特定の周波数範囲を設定している。リピーターのメンテナンス後、顧客が“音が違う”と不満を述べることが多いのだが、ブランドでは音色のパラメータを設定できるだけでなく、音響を録音し、サービス後も同じ音が出ることを確認している。さてオートマティックそのものに話を戻そう。

ビバー オートマティック

ビバーのオートマティックは、カリヨン トゥールビヨンに比べて控えめながらも際立った美しさを備えている。ブランドがまだ創設まもなく、デザインコードを発展させている段階にあることを考えるとこれは自然な流れだ。ピエール・ビバー氏は今後10年間の時計開発のロードマップを持っていると話してくれたが、コアモデルは頻繁にリリースする予定であり、それに伴ってデザインのフィードバックを反映させることで、デザインも急速に進化していくとしている。また10年後を振り返ったときに、それぞれのデザインが前作をさらに向上させたと感じられることを目指しているとも話していた。1年という短期間ながら、彼らは大きな一歩を踏み出したと私は感じている。

ビバーはデザインスタートから市場投入までが非常に速い。“オートマティック”の開発はわずか2年前に始まったばかりである。これは各モデルに時間をかけることを強調する、多くの独立系ブランドとは対照的だ。しかしビジネスモデルは違う。デザインやアイデアは一元化され、部品は最高のパートナーから選び、時計は自社で組み立てられる。この流れが確実にスピードアップにつながっているのだ。今回紹介する4種類のバリエーションでは合計86本のみが製造されるが、オートマティックは今後さまざまなバリエーションでコアモデルとして長期的に展開される予定だ。また、クライアントや信頼できる友人からのフィードバックをうまく取り入れているようで、オートマティックの将来のバージョンは、オリジナルの魅力を保ちつつもユニークなデザインに仕上がることが期待できる。私がオートマティックの写真を撮っていると、ピエール氏がスケッチを持って部屋に入り、次に登場する時計のデザインについてどちらが好きか、そしてその理由を尋ねてきた。その後すぐに時計職人たちの元に戻り、私の意見がどれほど実現可能かを確認していた。

ブランドの“核”となる特徴にあるのは、質実でややゲルマン的なスタイルであるだけでなく、21世紀的なデザインでもあることだ。コレクションの主力となるふたつのモデルは同系色のケースとダイヤルを特徴としており、RGにはRGダイヤルを、プラチナにはホワイトゴールドダイヤルを組み合わせている。どちらもセミセクターダイヤルのブルズアイ効果を施し、さらにサーキュラーとバーティカルサテン仕上げはすべて手作業で行っている。最初のリリースについて“少し冷たい印象”に感じたと述べたが、その理由をはっきり言い表すのは難しかった。今思えば、ストーンダイヤルが同系色のインデックスとのコントラストに欠けていたのが原因だったのかもしれない。

このムーブメントは、ただの新型エンジンというだけにとどまらない。JCB-003はデュボア・デプラ社と共同で開発されたが、本作のためだけではなく、将来的にカレンダーやクロノグラフといったモジュールコンポーネントを動かす計画があるのだという。その点を踏まえて、ムーブメントのサイズは厚さ4mm、直径30mmとなっている。またゼロリセット機構を備えており(レジェップ・レジェピのクロノメーター コンテンポラン IIにやや似た機構)、精度に重点を置いている。ブランドは自社の時計を公式なテストに提出していないが、アトリエでの試験ではクロノメーター認証の基準を超える性能を発揮している。時計は2万5200振動/時(3.5Hz)で時を刻み、パワーリザーブは約65時間だ。

私のなかではムーブメントの仕上げとデザインの選択が特に印象に残った。マイクロローターとブリッジの位置関係により、従来のコート・ド・ジュネーブ装飾はあまり効果的ではなかった。その代わりに、ブランドはムーブメントの一部を大胆にカットして、テンプ、輪列、ゼンマイ香箱を露出させるデザインを採用したのだ。“ギター”型のブリッジもカットされ、手巻き用のコハゼ車(または香箱のタンブール)が見えるようになっている。この仕組みはグランドソヌリのデザインから着想を得たもので、こうしたクリックホイールが自動巻き時計に実装されたのはおそらく初のことだ。さらにプレートの側面と内部のあいだに明確な境界をつくるべくラインをくり抜き、ブリッジの上にはクル・ド・パリ装飾を施している。これらすべてには、ハイエンドな独立系ブランドに期待されるアングラージュとブラックポリッシュ仕上げが施されている。ガンギ車の宝石部分にはショックアブソーバーまで備えており、いい意味で過剰に設計された感がある。

ラグが下向きになっていることで、時計を平らに置いたときに裏蓋ではなくラグの部分が接地するようになっている。またラグからラグまでの長さが47.5mmにもかかわらず、手首に非常になじむ形状となっているのもポイント。リューズも重要なパーツで、デザインというよりは手巻きの感触を重視してムーブメントが設計されている。巻き上げ時のコハゼのクリック感は心地よくて力強く、適度な抵抗が感じられる。シンプリシティほどではないが、私が記憶している限り、自動巻きムーブメントのなかでははるかに優れた感触だ。

また装着感は驚くほど快適である。39mmのケース径でありながら、ラグからラグまでが47.5mmというサイズのため、見た目は実際よりも大きく感じる。その一方で、ラグを大きく下に向けたデザインにより装着時にはとても快適なフィット感を実現した。このデザインはピエール・ビバー氏が愛するパテックのRef.3448から多くのインスピレーションを受けており、特徴的なケースシェイプや角ばったラグにその影響を感じさせる。彼はまた、Ref.2523のフラットなエッジがラグへと下がるデザインにも言及していたが、個人的にはそこまでの共通点は見つけられなかった。ただデザインは私の得意分野ではないため、その見方もあるかもしれない。いずれにせよ私もRef.3448が大好きで、その類似性は明らかだと思う。

これまで主にコアコレクションに注目してきたが、ジャン-クロード・ビバー氏が常に求めていたのは、ストーンダイヤルを使用したモデルを数本製作することだった。これらは“アトリエコレクション”の一部を成している。下記に見られるのは、RG製ケースに収められたブルーピーターサイトダイヤル(8万9000スイスフラン、日本円で約1500万円とスタンダードモデルより1万4000スイスフラン高い)と、プラチナケースに収められたサンドグレーオブシディアンダイヤル(9万2000スイスフラン、日本円で約1560万円で、コアモデルが7万8000スイスフラン、日本円で約1320万円である)だ。コアコレクションでもアトリエコレクションでも、個人的に最も好みだったのはRGモデルだ。ケースの温かみと、とくにストーンダイヤルの場合そのコントラストが非常に魅力的だった。

なおブランドのブレスレットも若干リデザインされている。新しいブレスレット(RGまたはプラチナ仕様)は、ラグのシェイプを反映した角度のあるリンクを引き続き採用しているが、ストレートなエンドリンク(ラグ間19mm)によりヴィンテージな雰囲気を醸すようになった。これらのブレスレットは全モデルに対応するアップグレードオプションであり、価格もかなり高額だ。RGで1万9000スイスフラン(日本円で約320万円)、プラチナで2万9000スイスフラン(日本円で約490万円)となっている。装着感もよく仕上げも素晴らしいが、個人的にはストラップをつけたときの全体のまとまりのほうが好みだった。ストラップ仕様にすることで、時計はよりヴィンテージの要素が際立ち、モダンな印象を与えるのではなくクラシックな魅力を強調しているように感じられる。

10mm厚のケースの奥行きの大部分は、高さのある立体的なインデックスを針が越えるために必要なものだが、それでも全体として非常にスリムに仕上がっている。私はRGモデルの温かみとコントラストが印象的で好きだ。とくにミニッツトラックとRGのインデックスを備えたピーターサイトダイヤルが気に入った。RGダイヤルでは、18KRGの時刻表示インデックスと針に施されたアンスラサイト仕上げがコントラストを生み出している。針は手作業でサテン仕上げされ、内側に4つの内角を持つ面取りを採用。またミニッツトラックもとても精巧で、レーザーカットと植字が施されている。プラチナモデルではWGに使用された合金の影響で、より温かみのある色合いになっている。

ヴィンテージからインスピレーションを多分に受けながらも、ビバー オートマティックは独立時計製造の潮流に(自信を持って)逆行しているように感じられる。MB&Fやグルーベル・フォルセイのような極端にアヴァンギャルドなデザインや、レジェップ・レジェピ、テオ・オフレのようなきわめて伝統的なスタイルは多くのコレクターに支持され、彼らにとって安心感のある選択肢となっているが、この21世紀的な視点で再解釈された20世紀中期のパテックをほうふつとさせるデザインは、市場の隙間を埋める存在になっている。

何よりもムーブメントに施されたクル・ド・パリ装飾は伝統から逸脱しており、私がそのよさを理解するまでに少し時間がかかった。普段はあまり好まない装飾で、パテックのRef.6119Gでもそう感じていたのだが、初めて目にしてから2週間が経つあいだにその魅力を感じられるようになった。ギヨシェ模様はマイクロローターのセンター軸から放射状に広がっている。軸に近い部分は細かく、ブリッジの縁、とくにリューズの真下にある部分ではより大胆なデザインである。

ムーブメントの仕上げを見て何かを思い出せる気がしたが、なかなかはっきりと分からず、まさに思い出しそうな感覚が続いていた。ある人はそれを“インダストリアル”と呼んだが、それは少し違う印象だった。そしてふと気づいた。ブリッジのエッジの強いラインやセンターパターンには、未来的でありながら古代的な要素があり、映画『エイリアン』のデザインを手がけたスイス人アーティスト、H・R・ギーガー(H.R. Giger)を思い起こさせた。これは決して否定しているわけではない。ムーブメントの機械的な性質を強調しつつ、曲線的で自然なラインを取り入れた強力なデザイン言語だ。もしこれが“バイオメカニカル(生物的要素と機械的要素を融合させたもの)”ではないなら、ほかに何がそうであるのか分からない。

新しい時計を理解するには時間がかかるもので、私はすぐに大きなリアクションを示さずディテールをじっくりと確認するようにしている。オートマティックには無数のディテールがあり、最初は戸惑ったのだが次第にその魅力を感じるようになった。ピエール・ビバー氏はブランドのもっとも純粋な理由、つまり“なぜ”これらの時計を製作したのかについて正直に話してくれた。それは、単に一族がこれをつくりたかったということに尽きる。彼らは“失われた芸術を復活させる”といった大げさな目標を掲げているわけではない。多くのブランドがよく行う感情的なストーリーテリングではないが、ビバー氏が率直な姿勢を貫き、無理にマーケティング的な言葉を使わなかったことに敬意を抱いている。

もちろんそれだけではない。JCBがレガシーを確立しようとする強い意志もその一端である。彼はまたかつてブランパンを売却したことに対して大きな後悔を抱えており、今回がゼロから何かを築き上げる最後のチャンスだと考えているようだ。ピエール氏も父親が業界で築いてきた歴史のおかげで、サプライヤーや小売業者、コレクターとの関係値がほかの人よりもスムーズであることは十分に理解していると語っていた。それでも、彼らがつくり上げた時計には十分な価値があると確信した。インターネットが今度こそ寛容になることを期待している。どれだけ話題性を持っているかに関係なく、いい時計は、いい時計だ。この時計も多くの顧客にとって理想的な選択肢となるだろう。

このような時計をつくることは決して簡単ではなく、ピエール氏とそのチームは与えられた余地(自由に使える時間やリソースや他者からのサポート)をフルに活用して、さらに高みを目指そうとしているようだ。また36人もの人々が、ファーストモデルに55万ドル(日本円で約7860万円)以上“投じた”のは、単に個人的または職業的な“義務感”で購入したとも考えにくい。ビバー家は、ジャン-クロード氏が出演したTalking Watchesで紹介されたほとんどの時計を売却してブランドの資金に充て、それが無駄にならないよう全力を尽くしている。ある独立時計師は、商業的な成功こそが偉大な平衡装置(最終的な決定要因)だと言っていた。ビバー氏が時計の発売前にこれだけの売上と確約を得ているなら、今後さらにブランドを成長させ、発展させる時間があるだろう。このリリースが大きな成功であり、前進の一歩であることは間違いない。彼らが私に見せてくれたプレビューを考えると、次に何が来るのかとても楽しみだ。

ビバー オートマティック。39mm径、10mm厚の18KRGまたはプラチナケース、80m防水。スタンダードダイヤルは無垢の18KWGまたはRG、アトリエコレクションのダイヤルはサンド仕上げのオブシディアンまたはピーターサイト。針は18KWGまたはRG、サテン仕上げと手作業による面取り、18KWGまたはRGのアプライドインデックス(アンスラサイト仕上げ)。マイクロロータームーブメントの自社製Cal.JCB-003搭載、2万5200振動/時(3.5Hz)、36石、パワーリザーブは約65時間。レザーストラップにプラチナまたはRGのピンバックル、もしくは5列のビバーブレスレット(プラチナまたはRG)。合計86本の限定生産(各素材ごとに25本、アトリエコレクションは各素材ごとに18本)。

オーデマ ピゲ新作「ロイヤル オーク コンセプト スプリットセコンド クロノグラフGMT ラージデイト」~

オーデマ ピゲがロイヤル オーク コンセプト スプリットセコンド クロノグラフGMT ラージデイトを発表~新たなハイテクの地平を切り開く

オーデマ ピゲは、初の自動巻きスプリットセコンド フライバック クロノグラフを発表し、ロイヤル オーク コンセプトの新たな一章を開きました。ロイヤル オーク コンセプト コレクションのハイテクなアイデンティティにインスパイアされたこのタイムピースは、その未来的な外観、人間工学に基づく熟練した性能を新たな次元に引き上げています。43mmという新しいケースサイズに、コレクション初の交換可能なストラップを採用したこのスポーティなモデルは、質感、深み、光を表現した立体的でモダンなチタン製ケースを特徴としています。このモデルには、最先端のムーブメント、自動巻きキャリバー4407が搭載され、その複雑なマイクロメカニズムは裏蓋の中央に配置されています。また、初めて、ケースバックからローターの振動ウェイトを支えるボールベアリングの中に組み込まれた先進のスプリットセコンド機構を見ることができるようになりました。最初のロイヤル オーク コンセプトの発表から20年以上が経過した現在も、このコレクションは製品研究開発のプラットフォームとして先駆的な役割を担っています。

自動巻きキャリバー4407を搭載した「ロイヤル オーク コンセプト スプリットセコンド クロノグラフ GMT ラージデイト」は、マニュファクチュール初の自動巻きスプリットセコンド フライバック クロノグラフとしてシリーズ生産されます。オーデマピゲスーパーコピー 代金引換優良サイトこの最先端の時計は、多次元的な新デザインを採用し、コレクション初の交換可能なストラップを導入しています。 © オーデマ ピゲ提供

『私たちはオーデマ ピゲ初のスプリットセコンド機構を搭載した自動巻きフライバック クロノグラフをご紹介できることを大変嬉しく思います。このクラシックなコンプリケーションは、現代のスポーツウォッチに相応しい高度な信頼性を実現するために、あらゆる面で見直しが行われました。この時計は、非常に複雑なメカニックの製造を専門とする、さまざまなチームの協力によって実現しました。』
ルカス・ラッジ(オーデマ ピゲ 研究開発ディレクター)

奥行き、仕上げ、光が戯れる近未来型ケース
オーデマ ピゲは、人間工学とコレクションの大胆な美しさを融合させた革新的なコンプリケーションを加えることで、ロイヤル オーク コンセプトを進化させ続けています。このタイムピースの製造には、チームの技術力の更なる向上と大規模な研究開発を必要としました。
このチタン製の時計は、43mmの新しいケースサイズに加え、コントラストと光を駆使した多面的なデザインを特徴としています。精密な構造のケースには、人間工学と現代的なデザインを両立させるために、複雑なプログラミングと製造工程が必要とされました。ケースとベゼルは、手首の自然な形に添うようにわずかにカーブし、ゆったりとしたサイズながら快適な着け心地を実現しています。

サンドブラスト加工が施されたチタン製インサートは、ケースの円形および角形の幾何学的な配置を大胆に浮き彫りにしています。サンドブラスト加工が施されたチタンケースを、マニュファクチュールのトレードマークであるサテン仕上げの八角形のベゼルが包み込み、その丸みを帯びた輪郭はポリッシュ面取りで強調されています。サテン仕上げやサンドブラスト、ポリッシュ加工を組み合わせた表面は、時計の質感をさらに高め、無限の光の戯れを作り出します。

このコレクションの力強いラインは、ネジ込み式リューズやプッシュピースなど、ブラックセラミック製の研ぎ澄まされた素材によってさらに強調されています。2時、4時、9時位置のプッシュボタンには、ケースと同様にサンドブラスト、サテンブラッシュ、ポリッシュ仕上げの面取りが施され、立体的なプッシュボタンガードが大胆に配置されています。

『この自動巻きスプリットセコンド クロノグラフは、内側から外側に至るまで、極限までデザインにこだわっています。未来的なロイヤル オーク コンセプトのケースに組み込まれたこのコンプリケーションは、これまでにない高水準の技術レベルに到達しています。』
アンヌ-ガエル・キネ(オーデマ ピゲ コンプリケーション部門責任者)

ツートンカラーのオープンワークダイヤルディスプレイ
ムーブメントのブリッジをイメージしたオープンワークダイヤルから、内部の複雑なマイクロメカニズムを垣間見ることができます。丸みを帯びた開口部は、1枚のニッケルシルバープレートから切り出され、サンドブラスト仕上げのブラックPVDとポリッシュ仕上げのロジウム調の面取りが施されています。このコントラストにより、スポーティで建築的な時計に深みと光を与え、ロゴのないダイヤルが、さらにその効果を高めています。

ホワイトゴールド製の針とアワーマーカー、そしてダイヤルに配されたホワイトの転写インデックスが、この時計のツートーンカラーの美しさを際立たせています。さらに、アワーマーカー、針、カウンター、ラージデイト、GMTデイナイトディスクには、暗闇で最高の視認性を発揮する蓄光処理が施されています。クロノグラフ機能を示すレッドとGMT機能を示すイエローのアクセントが、さりげなくも鮮やかな色彩を添えています。ブラックのインナーベゼルには、ホワイトのタキメータースケールがプリントされ、時計のデザイン全体の完成度をさらに高めています。

ハイテクなスプリットセコンド、フライバック クロノグラフ
限りなくコンテンポラリーな外側と内側、自動巻きキャリバー4407はフライバッククロノグラフ、スプリットセコンド、GMT機能、ラージデイトをロイヤル オークコンセプトコレクションのスタイリッシュなケースに搭載した、機械工学と工業技術の結晶です。オーデマ ピゲで初めてシリーズ化されたこのモデルは、2019年にCODE 11.59 バイ オーデマ ピゲコレクションで発表された、マニュファクチュール最新世代の一体型フライバック クロノグラフ ムーブメント、キャリバー4401がベースとなっています。

通常のクロノグラフとは異なり、フライバック機能により、クロノグラフを停止させることなく、リセットし、再スタートさせることが可能です。コラムホイールは垂直クラッチシステムと共に機能します。クロノグラフのスタートやストップ時に、秒針はブレることなく正確に作動します。さらに、特許保持のゼロリセットメカニズムにより、クロノグラフとスプリットセコンド針を瞬時にゼロリセットすることができます。

スプリットセコンドメカニズムは、専用のプッシュボタンを押すとクロノグラフ針とは別にスプリットセコンド針が動き、ラップタイムの計測を可能にします。プッシュボタンを再び押すと、スプリットセコンド針はとクロノグラフ針に追いつき、完璧なシンクロでダイヤルの周りを回り続けます。これは何度でも繰り返すことができます。9時位置にあるプッシュピースは、ミハエル・シューマッハと共同開発したレーストラックでの連続ラップタイムを計測できる初の機械式時計ロイヤル オーク コンセプト ラップタイマー(2015年)をどことなく連想させます。薄型のムーブメントを実現するため、スプリットセコンド機構はセミペリフェラルローターのボールベアリングの厚みの中に組み込まれ、懐中時計や手巻き腕時計のようにサファイアケースバックから見えるようになりました。通常、自動巻きの時計では見ることが出来ない、スプリットセコンドホイールと2つの作動クランプは、プラチナ製ローターの中央、メカニズムを固定するX字型のブリッジの下に見ることができます。

さらに、この最新鋭のタイムピースにはロイヤル オーク コンセプト コレクションの定番となったGMT機能を搭載しています。3時位置にあるGMTデイナイトディスプレイにより、一目で第二時間帯を読み取ることができます。これは3時位置のリューズのコーアクシャルプッシュピースで調整します(一度押すと1時間進みます)。GMTシステムは、異なる速度で回転するディスクと針がベースとなっています。時針は12時間で1回転、デイ/ナイト表示ディスクは24時間で1回転し、白い半分が昼間を、黒い半分が夜間を表す2つのカラーエリアで識別されます。

12時位置のラージデイトは、デジタル表示で視認性を高めるとともに、6時位置のスモールセコンドと完璧なシンメトリーを形成しています。
また、キャリバー4407は、ハイテク機能を搭載しながらも、高級時計製造の伝統を守り続け、サンドブラスト、サーキュラーサテン、サーキュラーグレイン、ポリッシュ面取りなどのエレガントなオートオルロジュリーの装飾がサファイアケースバックから見えるようになっています。

「私たちは現在、全てのコレクションで合わせて18のムーブメントを開発中です。新しいロイヤル オーク コンセプト スプリットセコンド クロノグラフ GMTラージデイトの発表は、オーデマ ピゲの未来を築くための継続的な努力の一環なのです。」フランソワ-アンリ・ベナミアス(オーデマ ピゲ CEO)

ムーブメントのパイオニア
2019年にCODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ コレクションで発表した自社製クロノグラフキャリバー4401をベースに、スプリットセコンド機構の追加を可能にするため、エネルギーマネジメントを根本から見直したキャリバー4407を搭載しています。さらに、ブレゲ式オーバーコイルを採用した新しいオシレーターが開発され、その鋭いカーブを描く外側の端が、ひげゼンマイのコンセントリックの発達を保証し、精度を向上させています。

新しいスタイルの交換可能ストラップ
この新しいスポーティなタイムピースには、ロイヤル オーク コンセプト コレクション初の交換可能ストラップを採用しています。この交換可能ストラップシステムは、ケースとトリプルブレード フォールディングバックルの両方に直接組み込まれ、クリック&リリースでストラップを交換することができます。またこのシステムにより、ウォッチの装着時の安全性を確保することができます。

新しいブラックの交換可能ラバーストラップのデザインが、ケースのファセットと調和しています。ケースサイドの面取りはストラップにも施され、2つのパーツにシームレスな連続性を与えています。さらに、ストラップにはグレーを基調としたシンメトリーなインサートが施され、ケースとダイヤルの多次元的なツートーンの美学に呼応しています。また、付属のオールブラックラバーストラップを気分によって使い分けることができます。
直径43mmの新しいロイヤル オーク コンセプトの交換可能ストラップとして、イエローまたはレッドのアクセントが付いた2種類のブラックラバーストラップがブティックにて販売される予定です。

希少価値とハイテクノロジーの融合
ロイヤル オークの誕生30周年を記念して2002年に発表されたロイヤル オーク コンセプトは、21世紀のオートオルロジュリーにまったく新しい美学を打ち立てました。この機会に、オーデマ ピゲは航空産業で用いられる軽量で耐久性の高い合金、アラクライト602とチタンを組み合わせたコンセプトカーにインスパイアされた、150本限定モデルを発表しました。ベゼルはロイヤル オークのトレードマークである八角形のフォルム、重厚な丸みを帯びた44ミリのケースは、このタイムピースを新たな地平に送り出しました。ケースの未来的な美しさを引き立てるために、ダイヤルには最新の手巻き機構を露出させ、プッシュボタンが機能セレクター(巻き上げと時刻合わせ)となり、ダイナモグラフが主ゼンマイのトルクを表示するという革新的な機能を持たせました。

リニアパワーリザーブディスプレイは、バレルの回転数によって表示され、3時位置でリニアのターン回数を0から12のスケールにより表示します。9時位置にはトゥールビヨンケージとその衝撃吸収ブリッジも見ることができ、ケヴラーストラップが装着されていました。商品化を前提としないコンセプトウォッチとして企画されましたが、このモデルの20周年を記念して少量がシリーズ生産されました。その4年後、カーボンを用いた新たなモデルが発表され、ロイヤル オーク コンセプト コレクションが誕生したのです。以来、ロイヤル オーク コンセプトは、ハイテク機構とアバンギャルドなデザインを融合させ、オートオルロジュリークラフツマンシップの限界に挑み続けています。

今年、ロイヤル オーク コンセプトは、スプリットセコンド クロノグラフを現代的に再解釈します。このコンプリケーションは、時計製造の歴史の中で登場したクラシックなコンプリケーションの最後のファミリーと言えるでしょう。工業生産や競技スポーツの普及は、世の中が加速度的に進み、スピードがすべてだった時代に生まれたものです。その原点は、パフォーマンスの測定にあります。

1880年代から1890年代にかけて生産された1625本のウォッチのうち、クロノグラフを搭載していたものは625本で、そしてそのうち299本がスプリットセコンド針を搭載していました。以降、21世紀を通して発売されたクロノグラフ懐中時計の大半は、スプリットセコンド針を搭載し続けています。
しかし、このコンプリケーションは、20世紀のマニュファクチュールのクロノグラフ腕時計の中では大変希少なものでした。1996年以前に記録されていたものは、たった一つのモデルのみでした。このたった一つのなモデルは、1949年4月14日にオーデマ ピゲがニューヨークの小売店ローリッチに販売し、現在は一流のプライベート・コレクションに属していると記録されています。35mmのイエローゴールド製腕時計には、キャリバー13VZAHが搭載されています。スプリットセコンド機構は、生産開始後に特別なリクエストを受け、追加されたものです。資料によると、1946年に製造されたスプリットセコンド ムーブメントが追加されていますが、ケースに収められ販売された可能性は低いと思われます。

1996年にはスプリットセコンド クロノグラフが復活し、ラウンドケースに収められたオーデマ ピゲ初のグランド コンプリケーションウォッチに搭載されました。オーデマ ピゲ グランド コンプリケーションの伝統である、スプリットセコンド クロノグラフとパーペチュアルカレンダー、ミニッツリピーターを組み合わせたモデルです。続く1997年には初のロイヤルオーク グランド コンプリケーショが発表され、2013年にはスポーツウォッチ誕生20周年を記念して初のロイヤルオーク オフショア グランド コンプリケーションが発表されました。
スプリットセコンド機構の小型化により、オーデマ ピゲはクロノグラフ技術における更なる可能性を追求しました。2015年、マニュファクチュールはミハエル・シューマッハとのコラボレーションで特許を取得したロイヤルオーク コンセプト ラップタイマーを発表しました。2本のクロノグラフ針が交互に動くフライバックシステムを搭載したこの前衛的な時計は、3つのプッシュボタンで2本のセントラルスイープセコンド針を操作するシングルクロノグラフにより、レーストラックでの連続ラップタイムの計測を可能にしました。これまでデジタルでしか計測できなかったタイムインターバルの計測に、世界で初めて成功した時計でした。

この非常に複雑なタイムピースに続いて、今年、スプリットセコンド機能がロイヤル オーク コンセプト コレクションに加わりました。マニュファクチュールのグランドコンプリケーション製造から独立した、エンジニアリング、テクノロジー、時計製造の職人技を融合した、新世代の高度なスプリットセコンド機構への道を開くものです。

“Born in Le Brassus, raised around the world.”
⟪ル・ブラッシュの自然が生み出し、人とともに生きていく⟫

【仕様】
ロイヤル オーク コンセプト スプリットセコンド クロノグラフ GMT ラージデイト / 43ミリ
26650TI.OO.D013CA.01

[機能]
フライバッククロノグラフ、スプリットセコンド クロノグラフ、GMT24時間表示、時、分、スモールセコンド、ラージデイト。

[ケース]
チタンケースとベゼル、反射防止加工サファイアクリスタルとケースバック、ブラックセラミックのプッシュボタンとネジ込み式リューズ、5気圧防水。
ケース厚:17.4ミリ

[ダイヤル]
ブラックPVD、オープンワークのニッケルシルバーダイヤル、ブラックのインナーベゼル、蓄光処理を施したホワイトゴールドのアプライドアワーマーカーとロイヤルオーク針。

[ストラップ]
オーデマピゲ時計コピー 激安通販交換可能なブラックとグレーのラバーストラップ、チタンAPフォールディングバックル。交換可能なブラックラバーストラップが付属。

[ムーブメント仕様]
自動巻きキャリバー 4407
外径 :32ミリ (14リーニュ)
厚さ :8.92ミリ
石数 :73
部品数 :638
パワーリザーブ :約70時間
振動数 :4Hz (28,800振動/時)

価格:要問合せ
発売時期:2月予定

※すでに再三にわたってアナウンスされていますように、「ロイヤル オーク」は熟練の職人による仕上げの美しさが特徴的で、多くの工程を経ることで完成まで長時間を要し、年間の製造本数も限られていますため、引き続き入手困難な状況が続いております。新作におきましても、充分な供給が難しいことが予想されますことをどうかご理解いただいた上で、ご興味をお持ちの方は、お近くのオーデマ ピゲ ブティックにお問い合わせください。

オーデマ ピゲから 輝くターコイズダイヤルの「ロイヤル オーク オートマティック」イエローゴールドバージョンが登場~

オーデマ ピゲが輝くターコイズダイヤルの ロイヤル オーク オートマティック イエローゴールドバージョンを発表

オーデマ ピゲは、18Kイエローゴールドケースに天然ターコイズの輝くダイヤルを組み合わせた37ミリのロイヤル オーク オートマティックの新モデルを発表します。このプレシャスな貴金属とダイヤルの組み合わせは独特の輝きを放ちます。3000年以上前から宝飾の世界で使われているターコイズは、ポジティブなパワーを象徴する希少な石として、ロイヤル オークコレクションに今回登場します。

オーデマ ピゲスーパーコピー 代金引換優良サイト37ミリのロイヤル オーク オートマティックが18Kイエローゴールドのケースとブレスレット、天然ターコイズのダイヤルという装いで登場するのは初めてのことです。© オーデマ ピゲ提供

天然のターコイズ
パワーを秘めた希少な石
この新しい37ミリロイヤル オーク オートマティックは深い輝きを放つターコイズのダイヤルを採用しました。薄くカットしたターコイズはフェルト磨き、マイクロビーズ磨きとポリッシュを経て、ゴールドカラーの真鍮の台にはめ込まれます。全体の厚みはわずか0.75ミリ。天然のターコイズを採用しているので、ダイヤルはそれぞれの組成を活かしているのでテクスチャーもカラーも一つひとつ違い、工程と仕上げへの反応も違う二つとない存在です。
この新モデルのために厳選されたメキシコ原産のターコイズのやや濃いめで控えめなモチーフが、一つひとつのダイヤルを唯一無二な存在に高めています。
3000年以上前にエジプトや中国文明の中で使われていたターコイズは世界で最も古くから知られる石の一つです。このような長い歴史と独特の鮮やかな色により、ターコイズは宝飾界で最も希少で求められる石の一つとされています。さらに健康、幸運、保護など多くのスピリチュアルなパワーを秘める石としても知られています。

目をとらえる輝き
37ミリのイエローゴールド ロイヤル オークは2018年に登場しています。マニュファクチュールのブランドが得意としているポリッシュとサテンを組み合わせたケース、ベゼル、一体型ブレスレットの繊細な仕上げは、ル・ブラッシュのクラフツマンたちの手によるものです。
このイエローゴールドケースの正面に収められた天然ターコイズのダイヤルは、海のような深い色合いに輝きます。ブルーのトーンとコントラストとなるイエローゴールドのインデックスと針は蓄光処理が施され、暗い場所でも読み取ることができます。ターコイズのダイヤルには、アプライドのポリッシュイエローゴールドの« Audemars Piguet »シグネチャーロゴが、この石に合わせ特別に開発された微小な脚により取り付けられています。デイト窓は石のカラーにマッチさせています。

さらにこの新モデルはロイヤル オーク50周年記念の際に進化したエルゴノミーとビジュアルのデザインを採用。幅を広げたポリッシュ面取り、ブレスレットのケース側の最初のコマを台形とし厚さも次第に薄くしたこと、サファイヤケースバックをケースの中央部にややはめ込んだことなどが、この37ミリモデルに見えるデザイン進化です。

最新世代の自動巻きキャリバー
このロイヤル オークは最新世代の自動巻きムーブメント(時、分、秒、デイト)、自社製キャリバー5900を搭載しています。これは2022年の37ミリモデルに初めて搭載されたムーブメントで、3.9ミリという薄さ、4Hzの高振動、約60時間のパワーリザーブを備えています。サファイアケースバックから、22Kピンクゴールドのローター、アングルの磨き、サテン磨き、コート・ド・ジュネーブ、グレイン、面取りなどを始めとする洗練されたムーブメントの装飾を見ることができます。

天然石のダイヤルという伝統
ミネラルまたはプレシャスストーンのダイヤルは18世紀末の懐中時計に使われました。しかしサイズのより小さいウォッチのデリケートなダイヤルにこれを使うことが一般的になったのは、20世紀に入ってからでした。
オーデマ ピゲのストーンダイヤルは1960年代の終わりから1990年代の間に全盛期を迎えます。ウォッチのクリエイションとデザイン性が発展した時期です。ウォッチのデザインにタイガーアイ、ラピスラズリ、アヴェンチュリン、ガーネット、マザーオブパール、オパール、ルビー、アメジスト、ジャスパーなど多くのカラーストーンが使われました。
この新モデル、ロイヤル オーク オートマティックでは、このような創造のヘリテージをもとに、ターコイズの天然の輝きをイエローゴールドの外装に組み合わせ、太陽のパワーとポジティブな波動を放つタイムピースをつくり上げました。

“Born in Le Brassus, raised around the world.”
⟪ル・ブラッシュの自然が生み出し、人とともに生きていく⟫

【仕様】
ロイヤル オーク オートマティック / 37ミリ
15550BA.OO.1356BA.01

[機能]
時、分、センターセコンド、デイト。

[ケース]
18Kイエローゴールドケース、反射防止加工サファイアクリスタルとケースバック、5気圧防水。
ケース厚:9.1ミリ

[ダイヤル]
天然ターコイズダイヤル、蓄光処理を施した18Kイエローゴールドのアプライドアワーマーカーと針。

[ブレスレット]
18Kイエローゴールドブレスレット、APフォールディングバックル。

[ムーブメント仕様]
自動巻きキャリバー5900
外径 :26.2ミリ(11 ½リーニュ)
厚さ :4ミリ
部品数 :186
石数 :29
オーデマピゲ時計コピー 代引きパワーリザーブ :約60時間
振動数 :4Hz (28,800振動/時)
予価:¥7,645,000(税込)
発売時期:4月予定

※すでに再三にわたってアナウンスされていますように、「ロイヤル オーク」は熟練の職人による仕上げの美しさが特徴的で、多くの工程を経ることで完成まで長時間を要し、年間の製造本数も限られていますため、引き続き入手困難な状況が続いております。新作におきましても、充分な供給が難しいことが予想されますことをどうかご理解いただいた上で、ご興味をお持ちの方は、お近くのオーデマ ピゲ ブティックにお問い合わせください。