記事一覧

IWCは、今年の3月にインヂュニア・オートマティック 40を発表し。

ラグジュアリースポーツウォッチは、一時期の圧倒的な熱狂から比べると少し落ち着きを見せているカテゴリではありますが、やはりジェラルド・ジェンタがデザインを手がけたモデルが原点であることもあって、インヂュニアのカムバックは大きな話題となりました。

IWC インヂュニア オートマティック 40のブラック文字盤、質感のディテール
2023年新作として登場したインヂュニア・オートマティック 40。

 Watches & Wonders 2023の会場では、インヂュニアの歴史への理解を深めるための歴代モデルがいくつか展示されていたのですが、それらが世界中のブティックを回ることになりました。日本では、6月5日から7日にIWC 新宿ブティックで、6月9日から11日まではIWC大阪うめだ阪急ブティックで展示されます。

 また今回はディスプレイオンリーのミュージアムピースだけでなく、実際に購入することのできるプレオウンドウォッチも! 最近はロレックスやヴァシュロン・コンスタンタン、ゼニスをはじめ、多くのブランドが認定中古品を取り扱うプログラムを実施していますが、IWCが正式にメンテナンスし、保証をつけた形で時計を販売するのはこれが初めての試みです。

IWCスーパーコピー優良サイト販売されるのは9モデルのうち4つで、現行品と同じように専用ボックス、保証書(2年間の保証)とともに提供されます。ブティックで受け付けた全世界の希望者からの購入リクエストが本社へ送られ、選考の結果、購入者が決定されることになります。なおプレオウンドがプログラムとして継続されるわけではなく、今回はあくまでトライアル。今後どうなるかはこの結果次第とのこと。ではさっそく来日するヴィンテージモデルを一挙に見ていきましょう。

インヂュニア SL・オートマティック Ref.1832 (1976) :販売モデル

 IWCのためにジェラルド・ジェンタがデザインを手掛け、1976年に発表されたインヂュニア SL Ref.1832は、まさに2023年新作のオリジンとなるモデルです。インヂュニア SLは、初代インヂュニア Ref.666の控えめなラウンドケースの仕様とは異なり、H型リンクのブレスレット、細かな型打ちパターンが施されたダイヤル、それに5つの穴を持ったねじ込み式ベゼルが特徴的な正真正銘のスポーティウォッチでした。耐磁性能は初代と同じ8万A/m。

 なお、SLが何の略称かというのは、現在もはっきりとはわかっておらず、スーパーラグジュアリーを意味する“Super Lusso”や“Super Luxe”、流線型を表す“Stream Line”、一方ではスティールとラグジュアリーの略称という説も。直径40mmと1970年代当時としては大きなサイズだったため、“ジャンボ”の愛称がつけられた本作は、1976年から1984年まで合計543本が生産されました。

 本機は販売されるうちの1本で、価格は4万9000ユーロ(約736万円)です。

インヂュニア SL・オートマティック Ref.9232 (1978) :販売モデル

 インヂュニア SLのケースとブレスレットに18Kゴールドを採用したモデル。本機はスティールモデル同様にブラックダイヤルですが、なかにはゴールドダイヤルのバリエーションも存在します。

 1977年から1979年までにわずか55本しか生産されておらず、コレクション性の非常に高い1本となっています。なんと本機も販売される予定で、価格は6万9000ユーロ(約1000万円)です。

インヂュニア SL クォーツ Ref.3303 (1980)

 1970年代はクォーツ式に時計業界の未来があると考えられていた時代です。そのためインヂュニア SLにはクォーツムーブメントを搭載したモデルも存在しました。文字盤6時位置にインヂュニア SLのロゴとともにQURTZと記されていることが確認できます。

 クォーツ式SLは、ETAのCal.2405が搭載された初期モデルのRef.3003と、ここでご紹介する1980年にCal.2250を搭載し薄型化を実現したRef.3303が存在します。機械式モデルとは異なるデザインのブレスレットが採用されている点も特徴のひとつです。

インヂュニア ポケットウォッチ Ref.5215 (1983) :販売モデル

 自動巻き、クォーツと続いて今度は腕時計ではなく、1982年から1996年のあいだにごく限られた数のみ生産された懐中時計のインヂュニア Ref.5215をご紹介します。

 オリジナルモデルの防水性能は30m、軟鉄製のケースとダイヤルによって4万A/mの耐磁性能を実現していました。内部にはスモールセコンド採用のCal.H/9520を搭載。文字盤は、その規則的な格子パターンから海外ではグラフペーパーダイヤル、日本ではワッフルダイヤルと呼ばれ、ブラック、グレー、ホワイトのバリエーションがあります。このポケットウォッチも販売予定リストにあり、1万2900ユーロ(約193万円)で販売されます。

インヂュニア SL・オートマティック Ref.IW3506 (1985)

 初代インヂュニア SLの総生産本数が、全バリエーションを足し合わせても976本であることからもわかるとおり、お世辞にも成功したとは言えませんでした。

 そこで初代SLのデザインコードを受け継ぎながらIWCが1983年に完成させたのが第2世代のインジュニア・SL。ETAベースのCal.375を採用した直径34mmのケースを備えたインヂュニア Ref.3505です。本機は1985年に製造された後継モデルのRef.3506で、同社で初めて21Kゴールドをローターに採用したCal.A/3753を内部に搭載しています。耐磁性能は4万A/mでした。

インヂュニア・オートマティック “50万A/m” Ref.IW350808 (1989) :販売モデル

 34mmケースのインヂュニアをさらに進化させたのが、1989年に登場したインヂュニア・オートマティック “50万A/m”です。軟鉄製のインナーケースを使わずにこの驚異的な耐磁性を獲得。ヒゲゼンマイにはニオブ・ジルコニウム合金を使用することで実現されました。MRIスキャナーによる実験ではなんと370万A/mの磁場を耐え抜いたと記録されています。ケース8時位置には“500.000 A/m”の刻印が確認できます。

 残念ながら、この新たなヒゲゼンマイは、鋼ほどの耐久性がなく、また温度変化に弱かったため、4年で生産が中止に。後継機でクロノメーター認定ムーブメント搭載のインヂュニア・クロノメーター Ref.3521には軟鉄製のインナーケースが再び採用されています。

 この記録的な“50万A/m”も販売される予定で、価格は1万9900ユーロ(約298万円)です。

インヂュニア・オートマティック Ref.IW322701 (2005)

 時間は飛んでIWCが初代インヂュニアを発表してから50年後の2005年。4年のあいだ生産終了となっていたインヂュニアが自社製ムーブメントであるCal.80110を引っ提げて復活を遂げます。軟鉄製ケースによってオリジナルと同じく8万A/mの耐磁性を誇るインヂュニア・オートマティック Ref.IW322701です。

 直径42.5mmとサイズは大きく拡大され、ジェンタモデルから続くデザイン言語は共通ですが、全体のデザイン、特にダイヤルは大きく変更されています。異なるダイヤルパターン、より太いインデックスが採用され、12時と6時はアラビア数字へと改められました。インナーベゼルのミニッツカウンターもアラビア数字が取り入れられたものになっています。

インヂュニア・オートマティック・カーボン・パフォーマンス・セラミック Ref.IW322404 (2014)

 本作が登場する前年の2013年にインヂュニア・オートマティック Ref.3239が発表されました。直径40mm、厚さ10mmのスティールケースには実用性を考慮して初めてリューズガードが与えられたインヂュニアです。IWCはこのモデルをベースにクロノグラフやトゥールビヨンなどのコンプリケーションや、チタン、セラミックといった素材をケースに採用したモデルを展開しました。

 本機はそのうちのひとつで、カーボンケースにセラミックベゼルを組み合わせたモダンテイストのインヂュニア・オートマティック・カーボン・パフォーマンス・セラミック Ref.IW322404。2014年に世界限定1000本で販売。ケースバックのローターは、F1レーシングカーのピストンのシルエットを取り入れたものが採用されていました。

インヂュニア・デュアルタイム Ref.IW324402 (2014)

 IWCがインヂュニアに採用したコンプリケーションのなかでも最も実用的なモデルのひとつが、このインヂュニア・デュアルタイム Ref.IW324402です。リューズ操作で時針を1時間単位で前後させることができるモデルで、ブラックとホワイトの2種類で販売されました。

ブレゲを象徴するパイロットクロノグラフが5年ぶりに復活。

ブレゲ タイプ XXが軍用と民生用の2モデルでカムバック。

ブレゲ発案のトゥールビヨンやエレガントな薄型ドレスウォッチのイメージの強いブレゲ。そんな同社のコレクションのなかでも異色の存在であるパイロットクロノグラフウォッチのタイプ XXが、2018年の生産終了から5年の沈黙を破り、ついに復活を果たしました。早速新作モデルをご紹介したいところですが、より理解を深めるため、少しタイプ 20について振り返りたいと思います。

フランス空軍のパイロットウォッチ規格“タイプ 20”
タイプ 20とは、1950年代初頭にフランス国防省が、空軍用のクロノグラフウォッチを大量発注すべく作成した仕様書を指します。つまりイギリス空軍のマーク11のようなパイロットウォッチ規格のフランス空軍版ということです。

1952年12月にタイプ 20が、その後アワーマーカーつきの回転ベゼルが装着されたタイプ 21が1956年4月に制定されました。

そもそもタイプ 20が必要になった理由は、第二次世界大戦で勝利したフランスがドイツに対して戦争補償のひとつとして納入させていたフリーガー フライバック クロノグラフを、1949年にドイツ連邦共和国が成立したために自国で製造しなければならなくなったためです。

ロレックス スーパーコピータイプ 20の仕様の詳細が明確に記された公式資料は残されていませんが、もちろんフリーガー フライバック クロノグラフに範を取ったもので、以下のようなガイドラインが残されています。

タイプ 20規格のガイドライン

フライバッククロノグラフ
視認性の高いブラックダイヤル
3時と9時位置にサブダイヤルを備える2レジスター、そのうち片方が30分計であること
夜光塗料が施された針とアラビア数字インデックス
ケースの直径は約38mm、厚さは約14mm未満
スクリューバックケース
双方向回転ベゼル
日差8秒以内の精度
35時間以上のパワーリザーブ
クロノグラフを300回以上故障なく使える耐久性能
このタイプ 20の仕様をもとに様々なブランドからタイプ 20が製造されましたが、ブレゲのように持続的な性能をもった時計はありませんでした。

タイプ 20の足跡

ブレゲは1952年にバルジュー22にフライバックモジュールを加えたCal.222搭載のプロトタイプを提出し、翌年に航空技術局から受けます。1954年にはフランス空軍から1100本のタイプ 20の発注を受け、1955年から1959年にかけて供給しました。

さらに1956年と1957年にはフランスの精鋭テストパイロットが所属する飛行試験センター(Centre d'essais en vol、略称CEV)に80本を納入した記録も残されています。15分積算計を備えており、うちの50本については6時位置に12時間積算計を有していました。

空軍だけでなく1958年にはフランス海軍から、航空部隊(アエロナバル: Aéronavale)のパイロットとセーラー用に500本の発注を受け、1960年1月13日にすべてが納品されました。ダイヤルにはブレゲのロゴが配されていたほか、3時位置の積算計はサークルが拡大された15分積算計を採用。これは離陸前の機体チェックの時間が15分だったことに由来します。

1967年製のタイプ XX、ブレゲ ミュージアム所蔵 。(Photo Courtesy: Breguet Official Website)
1967年製のタイプ XX(ケースNo. 2988)、ブレゲ ミュージアム所蔵 。(Photo Courtesy: Phillips)

ブレゲは、1954年から1970年まではフライバッククロノグラフを民間向けにも販売しました。軍用のタイプ 20と区別するためタイプ XXという名称となり、2000本以上を販売。1971年には第2世代が登場。15分積算計はそのままに12時間積算計があるものとそうでないものがあり、約800本を販売します。1986年までに残りがすべて販売され、生産終了となります。

1995年に第3世代のタイプ XXが発表されたことで再びコレクションが復活。日付表示のないアエロナバル Ref.3800がリリースされ、のちに日付表示付きのトランスアトランティック Ref.3820が登場。20年以上にわたって愛された第3世代のタイプ XX アエロナバルは2018年に生産終了となり、トランスアトランティックは2015年にカタログから姿を消していました。

ふたつのテーマ

左から軍用モデルのタイプ 20と民間モデルのタイプXX。

5年間の休止期間を経て、ブレゲはタイプ XXをミリタリーバージョンのタイプ 20 Ref.2057と民間バージョンのタイプ XX Ref.2067の2種類のデザインで復活させました。両モデルとも初代モデルのデザインを取り入れた同じ直径42mm×厚さ14.1mmのスティール製ケースが採用されています。

タイプ XX Ref.2057: ミリタリーバージョン

ミリタリーモデルのタイプ 20 Ref.2057は、1955年から1959年にフランス空軍に納められた1100本のモデルから着想を得ています。注射器型の時間分針が特徴的で、9時位置にスモールセコンド、3時位置に一回り大きな30分積算計“ビッグ・アイ”を配した2レジスターのブラックダイヤル、天面がフラットで掴みやすいようサイドにギザギザのついた両回転ベゼルや、ポワル型(梨型、菊リューズと呼ばれることも)のリューズなどオリジナルモデルの多くのスタイルが見られます。ベゼルの三角マーカー、アラビア数字インデックスと針すべてにミントグリーンの夜光塗料が塗布されています。

タイプ XX Ref.2067: 民間バージョン

民間バージョンのタイプ XX Ref.2067は、ミリタリーモデルと同じブラックダイヤルですが、レイアウトは異なり、6時位置に12時間積算計を加えた3レジスタースタイルです。特徴的な針の形状、ビッグ・アイ仕様の積算計、目盛り付きの両回転ベゼルの組み合わせは、先に掲載したブレゲミュージアム所蔵の1967年製のタイプ XX(ケース No.2988)から直接的なインスピレーションを得ています。操作しやすいよう大きめのリューズはフラットでクラシカルなデザインです。ベゼルの三角マーカー、アラビア数字、針にはヴィンテージ感のあるアイボリーカラーのスーパールミノバが塗布されています。

6時9時位置のサブレジスターには同心円状の装飾が施されている。

たっぷりと施されたスーパールミノバで夜間の視認性も抜群だ。

新ムーブメント
内部にはブレゲが4年の歳月をかけて開発した新しい自動巻きムーブメントが搭載されており、民間バージョンにはCal.728が、ミリタリーバージョンにはCal.7281が採用されています。ムーブメントの違いは728は15分積算計、12時間積算計とスモールセコンド、7281は30分積算計とスモールセコンド。

新型のCal.7281(軍用モデル)とCal.728(民間モデル)。

それぞれのムーブメントは5Hzハイビートで、コラムホイール、垂直クラッチ、フライバック、60時間のパワーリザーブに加え、シリコン素材がひげゼンマイ、ガンギ車、アンクルのホーンに採用されており、腐食・摩耗耐性だけでなく耐磁性にも優れた設計になっています。

ムーブメントには、サンバーストやスネイル、面取り、ペルラージュ仕上げが施され、飛行機の翼を模したブラックのローターには、ブレゲのロゴが刻印されています。

両モデルとも交換用のブラックのNATOストラップが付属します。レディスのクラシック 8068から導入された“ラピッド・インターチェンジシステム”と呼ばれるクイックチェンジシステムも初めてメンズモデルで採用されました。価格は258万5000円(税込)です。

我々が思うこと
ブレゲがタイプ XXを復活させるという話は事前に聞いていましたが、まさか軍用と民生用の2バリエーションで登場するとは思ってもみませんでした。より選択肢が多いというのは嬉しいサプライズです。