記事一覧

ブレゲを象徴するパイロットクロノグラフが5年ぶりに復活。

ブレゲ タイプ XXが軍用と民生用の2モデルでカムバック。

ブレゲ発案のトゥールビヨンやエレガントな薄型ドレスウォッチのイメージの強いブレゲ。そんな同社のコレクションのなかでも異色の存在であるパイロットクロノグラフウォッチのタイプ XXが、2018年の生産終了から5年の沈黙を破り、ついに復活を果たしました。早速新作モデルをご紹介したいところですが、より理解を深めるため、少しタイプ 20について振り返りたいと思います。

フランス空軍のパイロットウォッチ規格“タイプ 20”
タイプ 20とは、1950年代初頭にフランス国防省が、空軍用のクロノグラフウォッチを大量発注すべく作成した仕様書を指します。つまりイギリス空軍のマーク11のようなパイロットウォッチ規格のフランス空軍版ということです。

1952年12月にタイプ 20が、その後アワーマーカーつきの回転ベゼルが装着されたタイプ 21が1956年4月に制定されました。

そもそもタイプ 20が必要になった理由は、第二次世界大戦で勝利したフランスがドイツに対して戦争補償のひとつとして納入させていたフリーガー フライバック クロノグラフを、1949年にドイツ連邦共和国が成立したために自国で製造しなければならなくなったためです。

ロレックス スーパーコピータイプ 20の仕様の詳細が明確に記された公式資料は残されていませんが、もちろんフリーガー フライバック クロノグラフに範を取ったもので、以下のようなガイドラインが残されています。

タイプ 20規格のガイドライン

フライバッククロノグラフ
視認性の高いブラックダイヤル
3時と9時位置にサブダイヤルを備える2レジスター、そのうち片方が30分計であること
夜光塗料が施された針とアラビア数字インデックス
ケースの直径は約38mm、厚さは約14mm未満
スクリューバックケース
双方向回転ベゼル
日差8秒以内の精度
35時間以上のパワーリザーブ
クロノグラフを300回以上故障なく使える耐久性能
このタイプ 20の仕様をもとに様々なブランドからタイプ 20が製造されましたが、ブレゲのように持続的な性能をもった時計はありませんでした。

タイプ 20の足跡

ブレゲは1952年にバルジュー22にフライバックモジュールを加えたCal.222搭載のプロトタイプを提出し、翌年に航空技術局から受けます。1954年にはフランス空軍から1100本のタイプ 20の発注を受け、1955年から1959年にかけて供給しました。

さらに1956年と1957年にはフランスの精鋭テストパイロットが所属する飛行試験センター(Centre d'essais en vol、略称CEV)に80本を納入した記録も残されています。15分積算計を備えており、うちの50本については6時位置に12時間積算計を有していました。

空軍だけでなく1958年にはフランス海軍から、航空部隊(アエロナバル: Aéronavale)のパイロットとセーラー用に500本の発注を受け、1960年1月13日にすべてが納品されました。ダイヤルにはブレゲのロゴが配されていたほか、3時位置の積算計はサークルが拡大された15分積算計を採用。これは離陸前の機体チェックの時間が15分だったことに由来します。

1967年製のタイプ XX、ブレゲ ミュージアム所蔵 。(Photo Courtesy: Breguet Official Website)
1967年製のタイプ XX(ケースNo. 2988)、ブレゲ ミュージアム所蔵 。(Photo Courtesy: Phillips)

ブレゲは、1954年から1970年まではフライバッククロノグラフを民間向けにも販売しました。軍用のタイプ 20と区別するためタイプ XXという名称となり、2000本以上を販売。1971年には第2世代が登場。15分積算計はそのままに12時間積算計があるものとそうでないものがあり、約800本を販売します。1986年までに残りがすべて販売され、生産終了となります。

1995年に第3世代のタイプ XXが発表されたことで再びコレクションが復活。日付表示のないアエロナバル Ref.3800がリリースされ、のちに日付表示付きのトランスアトランティック Ref.3820が登場。20年以上にわたって愛された第3世代のタイプ XX アエロナバルは2018年に生産終了となり、トランスアトランティックは2015年にカタログから姿を消していました。

ふたつのテーマ

左から軍用モデルのタイプ 20と民間モデルのタイプXX。

5年間の休止期間を経て、ブレゲはタイプ XXをミリタリーバージョンのタイプ 20 Ref.2057と民間バージョンのタイプ XX Ref.2067の2種類のデザインで復活させました。両モデルとも初代モデルのデザインを取り入れた同じ直径42mm×厚さ14.1mmのスティール製ケースが採用されています。

タイプ XX Ref.2057: ミリタリーバージョン

ミリタリーモデルのタイプ 20 Ref.2057は、1955年から1959年にフランス空軍に納められた1100本のモデルから着想を得ています。注射器型の時間分針が特徴的で、9時位置にスモールセコンド、3時位置に一回り大きな30分積算計“ビッグ・アイ”を配した2レジスターのブラックダイヤル、天面がフラットで掴みやすいようサイドにギザギザのついた両回転ベゼルや、ポワル型(梨型、菊リューズと呼ばれることも)のリューズなどオリジナルモデルの多くのスタイルが見られます。ベゼルの三角マーカー、アラビア数字インデックスと針すべてにミントグリーンの夜光塗料が塗布されています。

タイプ XX Ref.2067: 民間バージョン

民間バージョンのタイプ XX Ref.2067は、ミリタリーモデルと同じブラックダイヤルですが、レイアウトは異なり、6時位置に12時間積算計を加えた3レジスタースタイルです。特徴的な針の形状、ビッグ・アイ仕様の積算計、目盛り付きの両回転ベゼルの組み合わせは、先に掲載したブレゲミュージアム所蔵の1967年製のタイプ XX(ケース No.2988)から直接的なインスピレーションを得ています。操作しやすいよう大きめのリューズはフラットでクラシカルなデザインです。ベゼルの三角マーカー、アラビア数字、針にはヴィンテージ感のあるアイボリーカラーのスーパールミノバが塗布されています。

6時9時位置のサブレジスターには同心円状の装飾が施されている。

たっぷりと施されたスーパールミノバで夜間の視認性も抜群だ。

新ムーブメント
内部にはブレゲが4年の歳月をかけて開発した新しい自動巻きムーブメントが搭載されており、民間バージョンにはCal.728が、ミリタリーバージョンにはCal.7281が採用されています。ムーブメントの違いは728は15分積算計、12時間積算計とスモールセコンド、7281は30分積算計とスモールセコンド。

新型のCal.7281(軍用モデル)とCal.728(民間モデル)。

それぞれのムーブメントは5Hzハイビートで、コラムホイール、垂直クラッチ、フライバック、60時間のパワーリザーブに加え、シリコン素材がひげゼンマイ、ガンギ車、アンクルのホーンに採用されており、腐食・摩耗耐性だけでなく耐磁性にも優れた設計になっています。

ムーブメントには、サンバーストやスネイル、面取り、ペルラージュ仕上げが施され、飛行機の翼を模したブラックのローターには、ブレゲのロゴが刻印されています。

両モデルとも交換用のブラックのNATOストラップが付属します。レディスのクラシック 8068から導入された“ラピッド・インターチェンジシステム”と呼ばれるクイックチェンジシステムも初めてメンズモデルで採用されました。価格は258万5000円(税込)です。

我々が思うこと
ブレゲがタイプ XXを復活させるという話は事前に聞いていましたが、まさか軍用と民生用の2バリエーションで登場するとは思ってもみませんでした。より選択肢が多いというのは嬉しいサプライズです。