ローヌブルーの魅力的な文字盤も、相違点のひとつである。卓越した精度は新作でも維持されている。
ローヌブルーの虹彩
何故時計を身に着けるのか? 正確な時刻を知るため、人に好印象を与えるため、自身で愛でるためなど、さまざまな理由があるだろう。こうしたニーズをすべて満たすのが、ショパールの「アルパイン イーグル XL クロノ」のチタンモデルである。高い品質を備えていることはいうまでもない。
魅力的な文字盤
ショパール「アルパイン イーグル XL クロノ」
目を逸らすのに骨が折れるほど美しい文字盤。ローヌブルーの文字盤は、ワシの虹彩を思わせる模様が極めて魅力的。この写真は組み立て風景を写したものだ。
時計を身に着ける理由に、まずは自身で愛でるためを挙げたい。その例に、2019年に発表されたショパールの「アルパイン イーグル」を取り上げよう。この腕時計は、比類するものがないといえるほど、美しい文字盤を備えている。文字盤上の荒々しく野生的なラインが流れていく模様は、それまで見たことのないものだった。途中で繊細に途切れながら幅が変化するラインは、一見、ランダムに見える。だが実際は規則的なパターンを持ち、光が当たると独特な反射を生む。
ショパールは、文字盤のテクスチャーをワシの目の虹彩になぞらえた。しかしながら、文字盤の出来は実際のワシの目よりも、パテックフィリップ スーパーコピー 届けしますはるかに目を見張るものだ。
アルパイン イーグル XL クロノのチタンモデルに採用された、文字盤の氷を連想させるブルーは、ローヌブルーと名付けられた。このカラーは、アルパインイーグルの“虹彩”パターンと相性が良い。アルプス山脈に源を発し、ブランドの本拠地、ジュネーブのレマン湖へと流れ込むローヌ川の、澄んだ冷たい渓流に着想を得たものである。
オリジナルを踏襲した意匠
アルパイン イーグル XL クロノは、文字盤だけが優れているわけではない。特徴的なベゼルを備えたスポーティーなケースも強い印象をもたらす。ベゼルはケース同様、グレード5チタン製で、縦方向に繊細なヘアライン模様が施されている。ここに、ネジ頭にポリッシュ仕上げを施した8本のビスが配され、明確なコントラストを生み出している。ネジ頭のマイナスの溝はすべて向きがそろっている。どこかで見覚えのある特徴かもしれない。だが、ショパールは他ブランドの腕時計に範を求めたわけではない。
アルパイン イーグルのデザインは、1980年に発表されたショパール初のスティール製ウォッチ「サンモリッツ」がオリジナルだ。当時のトレンドを反映したサンモリッツは、アルパイン イーグルよりもエレガントな印象を覚える。中央のコマがポリッシュで仕上げられた1連ブレスレットを備え、ベゼルに配された8本のビスは、周囲がこぶに囲まれたような、特徴的なフォルムだった。アルパイン イーグルではこの形状は踏襲されていないが、ケース左端にある、ふたつのふくらみがわずかにその名残をとどめている。このふくらみは、右側のリュウズガードに対する視覚的なカウンターウェイトの役割を担っている。
ショパールは、サンモリッツのエッセンスに現代的な解釈を加え、時流に合った魅力的なラグジュアリースポーツウォッチを作り上げた。堂々たるアルパイン イーグルは自信に満ちあふれ、直径は41㎜と、多くの人の手首にフィットすると考えられるサイズだ。
クロノメーター規格の高精度ムーブメント
ショパール「アルパイン イーグル XL クロノ」
アルパイン・イーグル・ファウンデーションのロゴが印されたトランスパレント仕様のケースバック。ダングステン製センターローターを搭載したクロノグラフムーブメント、Cal.Chopard 03.05-Cの動きを鑑賞することができる。
腕時計を身に着ける別の理由のひとつに、正確な時刻を知ることがある。今回のテストウォッチに搭載されている自社製ムーブメント、キャリバーCHOPARD 03.05-Cはこれを保証するばかりか、約60時間のパワーリザーブを備えるなど、今日、ユーザーの多くがマニュファクチュールムーブメントに求める要件をきちんと満たしたものだ。ムーブメントはシースルーバックから観察することができる。
アルパイン・イーグル・ファウンデーション(アルプスの環境と生物多様性を保護するために、ショパールの共同社長、カール-フリードリッヒ・ショイフレが共同設立した財団)のロゴが印されたサファイアクリスタル製ケースバックが、石数とブランド名が刻印されたローターブリッジの真上に位置している。そのため、これらの文言をはっきりと判読できないということが、この腕時計で唯一、残念な点である。
だが、このケースバック越しでも、厚さ7.6mmの自動巻きムーブメントのテンプやアンクルが動く様子を十分に鑑賞することができる。ルーペを使えば、クロノグラフをスタート/ストップさせたときに、コラムホイールがひとつずつ送られていく様子を見て楽しむことだって可能だ。
特許を取得した数々の技術
Cal.Chopard 03.05-C
Cal.Chopard 03.05-Cは、ショパールの「L.U.C」シリーズ向けムーブメント、Cal.L.U.C 03.03-Lの仕様違いのものだ。
クロノグラフのリセットは、エラスティックアームを備えた3つのハンマーによって正確に行われる。垂直クラッチや、スタート時の針飛びを抑える機構、リバーサーはこのムーブメントの特徴だ。ショパールによると、このリバーサーはエネルギー損失を低減し、香箱へのエネルギー伝達を迅速に行えるように設計されているという。パワーリザーブは今日のユーザーの要望に合わせ、約60時間まで延長された。テンプは緩急針の調整ネジで微調整する。
ショパールがムーブメントに華美な装飾を施す誘惑に負けなかったのはありがたい。シンプルながらも高級感のある仕上げは、この腕時計の持つスポーティーな性格にふさわしい。搭載ムーブメントは、スイス公式クロノメーター検定機関COSCから認定され、高い精度が約束されている。ウィッチ製歩度測定器もそれを証明してくれた。アルパイン イーグル XL クロノの平均日差はごくわずかで、ムーブメントが多くのエネルギーを必要とするクロノグラフ作動時も、マイナス1秒/日というわずかなマイナス傾向を示すにとどまった。最大姿勢差がわずか2〜3秒/日であることを合わせると、これ以上ない秀逸な精度である。
快適な装着感と良好な視認
ショパール「アルパイン イーグル XL クロノ」
「アルパイン イーグル XL クロノ」のチタンモデルは軽量ながら軽すぎず、適度な重みがあることで、装着感が抜群である。
アルパイン イーグルの装着感は極めて快適である。グレード5チタン製ケースとラバーストラップという組み合わせにより、総重量はステンレススティール製ブレスレットを装備した同モデルより、おおよそ30%ほど軽量化されている。それでも、身に着けていることを忘れてしまうほど超軽量ということもなく、心地よい重みが感じられる。これは、アルパイン イーグルのような重厚な時計では重要な要素だろう。今日、チタン製ケースを採用している多くのブランドと同じように、ショパールもグレード2の純チタンではなく、グレード5のチタンを採用している。グレード5チタンは、アルミニウムとバナジウムを添加することで、耐食性と耐塩水性を高めた合金だ。
アルパイン イーグル XL クロノは視認性も秀逸である。ファセットや、ポリッシュ仕上げが施された時針と分針は、さまざまな光の条件下でのコントラストが良好だ。針とインデックスにX1グレードのスーパールミノバが使用されていることから、暗所でも容易に判読できる。だが、明るく輝く文字盤に比べると、黒いミニッツスケールは、やや見劣りする印象が否めない。3本のクロノグラフ針は先端が赤いことから時刻表示と区別しやすい。30分積算計と日付表示はセミインスタントジャンプ式で、クロノグラフ分針は秒針がゼロに到達する2秒前に動き出し、その後、次のポジションに瞬時にジャンプする。日付ディスクは23時40分頃に回転が始まる。今回のテストウォッチではタイミングが少し早すぎて、午前0時の2分前に次の日付にジャンプしてしまった。
隠されたもうひとつのロゴ
ショパール「アルパイン イーグル XL クロノ」
軽量なチタン製ケースに、ラバーストラップが装着された本作。ルーセントスティール™製モデルと同様に、ポリッシュとヘアライン仕上げが施された腕時計だ。丁寧な仕上げのラグジュアリーな腕時計でありながら、その軽量さからアクティブなシーンでも活躍する。
ラグジュアリースポーツウォッチであるアルパイン イーグルにはラバーストラップもよく似合う。ステンレススティール製ブレスレットでは中央のコマが両サイドよりも隆起しているが、アルパイン イーグル XL クロノのチタンモデルでも、これをラグに見ることができる。ラバーストラップにもこの突起があり、ラインがバックルまでつながって見える効果を生む。加工品質の高いチタン製尾錠は着脱が容易だ。尾錠の内側にショパールの伝統的な筆記体のロゴが刻印されているのは驚くべきディテールといえるだろう。筆記体のロゴは現在、主にレディースウォッチに使用されているものだ。他方、すべて大文字のマスキュリンなロゴは、文字盤、ムーブメント、ストラップの裏側、バックルの表側など、至る所で見つけることができる。
価格は高いが品質も高い
ショパール「アルパイン イーグル XL クロノ」
©Patrick Csajko
ルーセントスティール™製ケースを備えた、「アルパイン イーグル XL クロノ」のラバーストラップを装着したモデル。採用したルーセントスティール™は、成分の80%がリサイクル由来の素材だ。
369万6000円という価格設定についてはどう評価すべきだろうか。ショパールではルーセントスティール™と呼ばれるステンレススティールを用いたモデルは、ラバーストラップ付きで297万円と、その差は約25%である。チタンは加工が難しく、高価な材料とはいえ、高額である。ショパールの時計の品質が極めて高いことは言うまでもない。また、価格設定がラグジュアリーウォッチの価値を決定づける側面があるのも否めない。
ショパールは2019年に初代アルパイン イーグルを発表し、ラグジュアリースポーツウォッチの分野に参入した。すでにマーケットリーダーとして確立されていたオーデマ ピゲの「ロイヤル オーク」やパテック フィリップの「ノーチラス」に並ぶモデルとして登場したのである。両者ほど知名度が高くなくても、より高額なクロノグラフも市場には存在する。それを思えば、アルパイン イーグルが価格に見合う価値を持つ腕時計であることに疑念の余地はない。購入すれば長く楽しむことができる。リセールバリューについては、先に挙げたブランドとはジャンルが異なると考えるべきだろう。さらに、ショパールはこの時計の収益の一部を、先述のアルパイン・イーグル・ファウンデーションに寄付していることから、ショパールブティックでしか手に入らないアルパイン イーグル XL クロノのチタンモデルを購入する愛好家は、環境や自然保護に貢献することにもなるのである。